流れを止めない

長いこと大きな話題にはならなかったゴールデウィークの高速道路渋滞ニュース。今年は、久々に30Kmは当たり前、50Kmを超えているという赤いブレーキランプの列が映像に流れた。懐かしい光景が戻ってきたなぁ、と思う反面、働き方改革はどっちの方向に向かっているのかと思わないこともない。渋滞の主な原因は、ブレーキの連鎖現象。ブレーキで減速することにより、後続車もブレーキを踏んで減速するため、交通容量が下がる「詰まり」現象が生じ、詰まりが成長して停止という事態に陥る。流れを止めないためにも、自動運転技術がもっと進み、システム間で車間距離を常に安全に保つことができたら、渋滞など起こらなくなるのか。それこそ、渋滞しなかったら、逆に、眠気も無くなるのか。いずれにせよ、自動運転技術の発展を期待している。

 

ETCの一般運用が開始されてから、20年が経過するらしい。高速道路の渋滞は、ETC 導入前の2000 年、料金所部での発生が最も多く、全体の 32.1% を占めていた。有料道路は全国津々浦々、確実に伸長していたことも背景にあり、料金支払に要する時間が社会問題として取り上げられていた時代だった。ETC 開発の動機は、そもそも、この料金所における渋滞の解消を目的として、情報通信技術(ICT)を使い、人と道路と車両とを情報ネットワークでつなぐことにより、交通事故、渋滞などといった道路交通問題の解決や利用者の利便性・快適性向上を目指す新しい道路交通システムの構築を目指したものだ。ETC の導入で料金所の処理能力は大幅に向上し、2008 年には料金所部の渋滞は全体の0.8%にまで激減。料金所部での渋滞はほぼ解消されたと言っても過言ではない。料金所での渋滞解消、および、それに伴う平均速度の向上により、走行車両から排出される二酸化炭素(CO2)等が減少したことで、推計結果では、年間約 22 万トンもの CO2 排出量が削減されたらしい。また、ETC普及率の増加に伴い、料金所建設費等も削減され、コストが大幅に縮減。平日・休日、夜間・早朝、通勤など、用途に合わせた弾力的な割引が行えるようになったとにより、交通を分散させるだけでなく、利用者のニーズに細かく対応できるようにもなってきた。首都高速については、既に、ETC使用率が、98%を越えており、2028年春までに一部を除く入口料金所はETC専用になるそうだ。同じ?とは言えないが、「流れを止めない」を目的に2001年から導入されたシステムが、JR東日本のSuicaである。磁気カードよりも自動改札の通過速度を速くし、利用客の流れがよりスムーズになることをメリットとして、ICカード乗車券(Suica)が導入された。JR東日本による「技術のオープン化戦略」は功を奏し、あっという間に、ほぼ全国の都市域にICカード乗車券の相互利用サービスが普及した。前述の、ETCもそうであるように、ひとつの情報通信技術商品またはサービスは、派生的に新たな商品・サービスを生み、市場が活性化することに大きな影響を与える、ということに着目すべきであろう。

 

ETCも、Suicaも、ここまで市場に浸透するために、現金車レーンを維持管理し続け、従来通りの磁気カードでも通れる機能を保ち続けてきたことが称賛される。現金を使うお客様にも、磁気カードを使うお客様にも不便はかけられない、というある程度の二重投資を覚悟の上で、「流れを止めない」ことによるお客様の利便性が、必ず、お客様に受け入れられることを確信していたに違いない。製造業においては、設計プロセスの品質を高め、生産技術の品質を高めることが、後工程プロセスを止めないことにつながる。3次元CADの普及により、2次元図面から立体を想像する必要性はなくなってきた。しかし、製造プロセスにおいては、設計した部品の図面を元に「加工」しなければならない。作業者に分かり易く図面を配置する配慮こそ、製造プロセスを止めないための設計者の第一歩である。一方、折角、3次元CADを導入してデジタル(D)が進んでいるにも関わらず、変革(X)が起きていないとすれば、それは組織の問題であろう。紙の図面と高品質なものづくりという成功体験が流れを止めているとは言わない。成功体験があるからこそ、Xに取り組む潜在力があるのだと思う。

SOLIDWORKS

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