User Interview :自社の強みをいかす大切さ

由紀精密様に事例取材にお伺いしました。今回はその事例に収録をしきれなかったたいへん魅力ある”よもやま話”を今月のユーザーインタビューとして再構成してお送りします。株式会社由紀精密・取締役社長・永松純さんにお話を伺います。事例・動画の公開は来月を予定しております。お楽しみに!

 

由紀精密には2つの大きな事業の柱があります。1つは精密加工。もう1つは開発・設計部門。得意としてきた旋盤加工、部品を回して丸ものの部品を作る加工技術、そして開発部門があるため、何か由紀精密らしい自社開発製品を作りたいという思いが以前からありました。当初産業機械のジャンルで製品開発に取り組みましたが、プロジェクトは思うように進みませんでした。振り返ると私の熱量も足りなかった。では何ができるのか。私自身はもともと音響が大好きで、レコードにもずっと親しみがありまして。あらゆるオーディオ機器の中でレコードプレーヤーが唯一の機械装置だと思っています。回転体の加工が得意で、かつ自社で設計ができる。私達ならば高精度なレコードプレーヤーをつくれるのではないかと思い至りました。メンバーに声をかけて少人数でスタートし、アイデアの段階から製品が世の中に出るまでには約2年間の月日がかかりました。

探求心を刺激するアナログレコードプレーヤー「AP-0」(左)
金属本来の風合いを感じ取れる美しい外観、その大半は自社工場で削り出した部品だ(右)

コアなオーディオファンの反応は?

外観には非常にこだわりを持って見た目の美しさを追及しました。見た目から音もスッキリ、デジタル的な音がするのかと思ったら「きちんとレコードの音がしますね」という声もいただいています。オーディオが好きな方の第一声は「S/N比が高い」というもの。S/N比が高いとは”数値が高いほど雑音が少ない=クリアに聞こえる”という意味なのだとか。「レコードの溝に刻まれた情報をできるだけ正確に取り出すというところに気を使って設計したプレーヤーです。正に狙い通りの評価で、本当にうれしいです。レコードプレーヤーを3台、4台をお持ちで、今は「AP-0」の使用頻度が一番高いとおっしゃる方もいて、本当にうれしく受け止めています。」(永松氏)

アナログの魅力はどこ?

レコードの溝に刻まれた溝からどれだけ正確にデータを拾い正しくアンプに渡せるか、機械設計視点で愚直に目指した。それが「AP-0」の個性となる

音楽を聴くには今やストリーミング全盛時代。しかし今ひそかにアナログレコードブームが起きているのだとか。アナログの音にはCDやストリーミングのデジタル音源にはない魅力があり、その魅力は情報量の多さ。再生した時にどう深みのある音が聴こえるのか。これがアナログを聴くことの面白さ、魅力です。オリジナル開発製品のアナログプレーヤーの設計担当者は20代のエンジニア。当然彼はレコード世代ではなくレコードは聞いたこともない。「これを完全にいい音で再生するとはどんなことなのか。ゼロから考えよう」と二人で一緒に開発をすすめ、まっさらなところから作り上げていきました。

 

 

開発上工夫された点や苦労された点

カンチレバーと呼ばれる針の部分が振動することによって発電し、音に変わり、その音の情報が電流として出ていきます。これがレコードの音が出る原理です。レコードを乗せ回転するプラッターは、何にも接触しない状態で回るのが理想です。私たちは試行錯誤の上マグネットの力で浮かせて回す方法を採用しました。そうすることでプラッターから伝わる接触ノイズを完全に除去しています。

技術的なポイント、いろいろ工夫をしているのがトーンアームです。レコードの再生が進むにつれ外側から内側に少しずつアームが寄っていきます。このトーンアームの先端でカンチレバーは細かく振動します。この細かい振動に反応しトーンアーム自体も一緒に振動してしまうと、レコードの正しい音が拾えません。トーンアームはゆっくり動かなくてはいけない。けれど、素早い振動に対しては鈍感でいなければなりません。そのためトーンアームの支点に特殊なブレーキを入れ(一般にはヒステリシスブレーキと言う)強磁性体とマグネットの力を使って、急激な動きをブレーキで自動的に抑える仕掛けを仕込んでいます。一見普通の軸ですが、実はかなり複雑な機構が詰まっています。

そしてカートリッジ。カートリッジはお客さまがそれぞれお好きなものを購入できます。カートリッジが変わると、音が変わります。中の発電の仕様が違うためです。カートリッジの先端の針をカンチレバーといいます。少しマニアックな話ですが、この針先は針の下に超鋼やダイヤモンドが付いています。丸針や楕円針など、ここの形は様々です。「AP-0」には、お客様の好みのカートリッジを取り付けることができます。

3DEXPERIENCE製品への期待値は?

これからのクラウド化には大変期待しています。毎年新しい機能がバージョンアップされることはとても大事なことですが、SOLIDWORKSのバージョン管理に設計者の時間を取られてしまうのも事実。お客さまとの使用バージョン違いも頻繁に起きます。クラウド化ではそこがなくなると期待しています。お客さまも私たちも同じクラウド環境で、同じデータをやり取りができるなら、そこへの期待値は大変大きいです。もう一つはデータ管理。今はサーバを立てて設計データを保管しています。クラウドソリューション上である程度の容量のストレージが準備されるなら、設計データはクラウド上にあるから、日本中どこにいてもそこにアクセスして設計できる、新たな設計者のあり方も検討できるはずです。

SOLIDWORKSに今後求めるもの

SOLIDWORKSは、この規模の機械設計者が使うCADとしては一番いいポジションにいますね。SOLIDWORKSは機械エンジニアが自動機や小規模な製品をまとめ上げるなら一番使いやすい。国内の3DCADの中ではもっとも使われているCADなのではないかと思います。そこが一番の強みです。ここを外すことなく進化していただきたい。いつまでも中小企業の我々であっても使いやすいSOLIDWORKSを守っていただけるとうれしいです。私たちの開発設計現場ではなくてはならないSOLIDWORKSですが、今後は3DCADのクラウド化が進んでいくでしょう。3DEXPERIENCEに載ることでちょっと煩わしいバージョンアップがなくなれば、さらにいいものになると期待しています。

それからクラウド上でチーム設計ができるよう期待しています。たとえばお客様に由紀精密に来ていただいて、会議室で一つの画面を見ながら、お客さまと私たちのエンジニアで一つのモデルを見ながら、もっとこの溝の幅を広げましょう、と言いながら形にしていく。それを離れた拠点であっても一つのデータを見ながら一緒にできるなら、大幅な開発スピードアップにつながります。何よりも一つのデータを見ながら開発するなら意思疎通として間違いがない。メールで言葉にしたり、電話で話したりすると、思いのズレが出てきて「ちょっと違った」ということが頻繁に起きます。そこをぐっと短縮できたらと率直に思います。これは社内でも活用できますね。例えば大規模なアッセンブリ設計に関して、複数の人がそのデータを触りながら設計を進められるなら、設計の大幅スピードアップになります。

一方心配な部分もあります。一つのCADデータを複数の人で扱うことの難しさ。私たちはPDMのチェックインとチェックアウト機能を使い、間違いが起きないように確認し合いながら設計していますが、チーム設計になった時どう解決するのか、そこを解決実現できたらと思います。

今回のコロナ禍において、私たちも半年以上新横浜の拠点をクローズし、設計者全員在宅勤務とし、自宅で設計する形を取りました。その時に一番問題になったのはコミュニケーション。ちょっと会って話せば、その場でスケッチをすればすぐに分かる話が、お互いに時間もかみ合わず、5分話せば済む話が「今日時間が取れるのは夕方の5時」と夕方まで待つこともあり、非常にロスの多い体験もしました。

クラウド化によってみんなで一つの設計を扱う時、今日は集中してこのモデルを扱うと決め、一緒にアクセスしつつ、その中でコミュニケーションの取れるようなチャット機能、会話もその場でできる形は試してみたいですね。これなら設計の進め方が変わってくる、働き方が変わってくるという印象を持っています。

 

来月も、PDM/解析/新製品開発をテーマにSOLIDWORKSユーザーさまにInterviewを行います。お楽しみに!

製品に関するお問い合わせは、お気軽にこちらまでどうぞ。3DEXPERIENCE Worksででできること「3分動画」がこちらからご覧になれます。

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