MBD 導入における 10 の注意点 – インフラストラクチャーを更新する

過去の「Drawingless or Paperless(英語)」のブログでは、MBD 導入に先立ってデジタル機器に巨額を投資する必要はないと明言しました。その一方で、MBD を導入してペーパーレスのプロセスもしっかり確立しているメーカーは世界中に存在します。今回は、ガルフストリームと Yaris Kabin の 2 社における革新的な事例について、どのようにインフラストラクチャー(ソフトウェアとハードウェア)を更新し、どのようなメリットがあったのかを見てみましょう。インフラストラクチャーの更新は、導入初期の必須事項ではないものの、MBD の効果を確実に高めるということをお分かりいただけると思います。

ガルフストリームは、法人・個人向けビジネスジェットの設計、製造、保守を担う大手航空機メーカーです。創業は 1958 年。機体にも機内にも力を注いでいます。下の画像は現在のラインナップと典型的な客室の様子です。

ガルフストリームが画期的だったのは、航空宇宙産業の長年の夢をついに叶え、FAA(アメリカ連邦航空局)の認定を受けた完全にデジタルな MBD システムで航空機を開発した点です。ガルフストリームの PLM スタッフサイエンティストである Dan Ganser 氏によれば、同社は 2007 年に G650 の設計で全面的に MBD アプローチを取り入れました。その後の G500 と G600 では、G650 の膨大な MBD データを再利用することで、新モデルを 2 つ同時に設計し、2015 年初めに両方の試験飛行を発表することができました。

このような快挙をどのように実現したのでしょうか。ベストプラクティスの一つは、写真のように、工場にネイティブな CAD ソフトウェアとデジタル端末を設置したことです。製造部門でネイティブな MBD データを直接取り出せるため、フォーマット変換を繰り返す必要がなく、データの消失を防げるようになります。また、設計部門では 3 次元の寸法や公差などの注記を減らし、重要な注記や特殊な注記の作成だけに専念することができます。もう一つの方針として、ガルフストリームは全サプライヤーに対して、同一のネイティブな CAD システムを使用し、メジャーリリースとマイナーリリースのバージョンも揃えることを求めました。しかも、内外すべてのシステムが 2 年ごとにアップグレードされるよう調整し、確実に同期を取っています。

Yaris Kabin の事例も紹介しましょう。Yaris はトルコのトラクターメーカーです。一般的に、1 台のトラクターには 700 以上のグループに分かれた 3,000 以上の部品があります。Yaris では、組立指示、BOM テーブル、分解図、ツーリングといった主要な製造情報を迅速かつ正確に取り出すために、工場内にタッチスクリーンとバーコードスキャナーを設置しました。今では、各組立作業場の必要に応じて、あらゆるデータを瞬時に入手することができます。

Yaris の特色はハードウェア投資額の低さです。例えば、写真のタッチスクリーンの価格はわずか 900 ドル程度ですが、騒音、粉塵、油にまみれた工場内でも完璧に機能します。バーコードスキャナーは 15 ドルもしません。そうでなくとも、ハードウェアが驚異的な早さで値下がりするのはご存知のとおりです。
なお、MBD 導入時には新しいインフラストラクチャーを構築するだけでなく、既存のソフトウェアやハードウェアをメンテナンスすることも重要です。最終的な製品品質に重大な影響を及ぼすからです。加工の場合で考えてみてください。プログラム自動生成のために CAM ソフトウェアを購入し、プログラム実行のためにNC(数値制御)装置を設置したとしても、ツールの摩耗、物体間の運動時の摩擦、センサーの許容誤差といった要因によって品質は大きく変わってしまうはずです。
長くなりそうなので、今回はこの辺で終わりにします。SOLIDWORKS MBD についての詳細は SOLIDWORKS MBD 製品ページをご確認ください。また、Twitter (@OboeWu)でのディスカッションにもご参加ください。次回の「Web 上の MBD を軽視しない」でも、MBD の効果を引き出す興味深い新技術について解説します。

 

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吉田 聡

吉田 聡

マーケティング部 ポートフォリオ イントロダクション スペシャリスト