MBD 導入における 10 の注意点 – 2D 図面をマスターとして頼らない

前回のモデルベース定義(MBD)導入に関する注意点「進捗を評価する」では、NIST の開発した MBD 能力評価について触れました。レベル 0 とレベル 1 の決定的な違いは、図面中心型かモデル中心型かという点だったと思います。今回はこれをもう少し掘り下げ、2 次元図面を設計の原本とするのをやめた方がよい理由を説明します。

表 1: MBD 導入における 10 の注意点

 

まずお聞きします。2 次元図面と 3 次元モデルの不一致はどのくらいの頻度で起きていますか? ぜひ記事の下方にコメントをお寄せください。個人的な経験やメーカーの話によれば、最大 60% の 2 次元図面が 3 次元モデルと食い違っているようです。不一致の原因は数え切れないほどあります。例えば、設計手戻りの後で、後続の生産工程で使用する 2 次元図面の一部を設計者がうっかり更新しなかった。工場が製造のスピードアップのために 2 次元図面を急遽修正したが、設計者に通知すらしなかった。あるいは、設計部門と製造部門の合意はあったものの、紙図面上で変更個所に赤線を引いただけで、3 次元モデルに反映しなかったなどです。

もう一つ質問させてください。3 次元モデルと 2 次元図面が食い違っていた場合、あなたならどちらを設計の原本に使用しますか? 言い換えれば、どちらをマスターとして頼りますか? こちらもコメント欄にフィードバックをいただければと思います。

実は心強い調査結果が出ています。2015 年の SOLIDWORKS 顧客ベース調査(サンプル数: 486)によると、顧客の 3 分の 2 が 3 次元を原本に使用しており、2 次元に頼っているのは 3 分の 1 だということです。3 次元を選んだ方々、おめでとうございます! モデルベース定義(MBD)まであと一歩に迫っています。2 次元を選んだ方々は、3 次元を原本に使った方がよい理由を見ていきましょう。

1. 人間は 3 次元の世界に生きており、その認知機能も 3 次元に基づいているため、本質的に 2 次元よりも 3 次元のコミュニケーションに向いています。したがって、3 次元の方が明確に伝わり、曖昧さがなくなるのです。
2. 上記 1 の背景と CAD 技術の発達により、今日では 3 次元設計が主流となりました。今後もますます人気は高まっていくはずです。すでに設計が 3 次元化しているのであれば、設計仕様を伝達するだけの目的で、わざわざ 2 次元平面に反映する必要があるでしょうか。寸法や公差などの主な仕様は、一貫性があって直感的に伝わる 3 次元モデルに取り込めば十分ではないでしょうか。こうした発想はごく自然なものらしく、前述の調査によると、SOLIDWORKS ユーザーの大部分が実際に検討しています。
3. 3 次元 CAD のワークフローを考えてみてください。3 次元設計の派生物が 2 次元図面です。あくまでも 3 次元が 2 次元を動かすのであって、その逆ではありえません。2 次元をマスターとして使用する場合、CAD のワークフローを完全に逆行しなければならず、作業が大幅に増えるばかりか、想定外の影響が生じるかもしれません。例えば、正式な製造仕様を 2 次元に載せて 3 次元に載せなかったとしたら、3 次元の更新時にメンテナンスしたり、改めて仕様を適用する必要があり、それだけで大仕事になってしまいます。
4. 生産工程全体で考えると、CMM プログラムの自動生成や 3 次元スキャンの検査レポート生成など、3 次元の寸法と公差によって数々のメリットがもたらされます

2 次元から 3 次元の原本に切り替える方法

まずは意識改革からです。組織全体で情報の一元化を図り、3 次元設計を追跡する習慣を奨励、確立する必要があります。その上で、モデル中心型のプロセスを構築します。例えば、GE パワー & ウォーターでは 3 次元モデル以外を PLM に入力することが禁止されています。中間的な疑似図面も必要に応じて作成できますが、PLM システムには入力できません。他の企業でも、設計チームの承諾を取らず、むやみに 2 次元図面を修正することを禁止している例があります。承諾が降りた場合でも、先に 3 次元モデルを変更してから、関係部門で使用される派生的な 2 次元図面をすべて変更しなくてはなりません。
あらゆる仕様を 3 次元に取り込んでおくという方法もお薦めです。注記や部品表(BOM)のテーブルなど、重要な製造情報が 2 次元だけに載っていて 3 次元に載っていなければ、必然的に 2 次元に依存しますし、反対意見の原因になります。しかし、安心してください。下図のとおり、SOLIDWORKS MBD は寸法と公差だけでなく BOM、注記、バルーンなどもサポートしており、さまざまな製造仕様を 3 次元に付加することができます。

今回もご参考になれば幸いです。MBD を導入するためには、「2 次元図面を原本にするのをやめる」と覚えておきましょう。今後も興味深い話題を取り上げていきます。次回は自動化についてです。SOLIDWORKS MBD についての詳細は SOLIDWORKS MBD 製品ページをご確認ください。また、Twitter (@OboeWu)あるいは LinkedIn (OboeWu)でのディスカッションにもご参加ください。

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吉田 聡

吉田 聡

マーケティング部 ポートフォリオ イントロダクション スペシャリスト