MBD 導入における 10 の注意点 – 設計部門のみにとどめない

モデルベース定義(MBD)は設計部門から始まるのが普通ですが、価値を十分に実現するためには、製造、検査、購買、サプライチェーンといった多様な部門とチームの参加が欠かせません。MBD イニシアチブにトップダウンの推進が必要とされる理由(英語)はここにもあります。今回のブログでは、MBD イニシアチブを設計部門以外の人々に展開していく方法について解説します。

MBD データは一般的に設計チームが作成を担当しますが、これはコインの一方の面にすぎません。データにはもう一つ、利用という面があります。3 次元データフローを形成し、2 次元図面を削減するためには、設計データが現在どう利用されているか、そして将来どう利用されるかについて、導入推進チームと設計者が理解していなければなりません。じっくりと聞き取り、擦り合わせ、連携することが、建設的に導入していくための唯一の方法です。ただ一方的にデータを送りつけたり、強引に慣れさせようとしても、うまくいくはずがありません。結局のところ、生産者が日々奮闘しなければ消費者に食べ物は届かないということです。

まずはサプライチェーンとの連携例をご紹介しましょう。アメリカのある医療機器メーカーでは、機械工場のハードウェア、ソフトウェア、専門知識といった能力について、徹底的に把握することを設計チームに求めています。「相手を知れ」という一般常識に帰着するわけです。

• 一部の工場は SOLIDWORKS のネイティブ形式を直接読み込むことができます。理想的です! 社内の設計チームは機能的にクリティカルな寸法と公差のみを定義します。工場はいつでも必要なときにネイティブモデルに戻り、公称寸法を確認できます。
• 一部の工場はモデルベースではあるものの、SOLIDWORKS のネイティブモデルを読み込めません。明示的な仕様として寸法と公差を完全定義した 3D PDF の提供を希望します。
• その他、2 次元図面が必須の工場もありますが、まったく問題ありません。今後も職務給やサイクルタイムを適切に管理するために、設計チームによる 2 次元図面の生成が必要です。
• 新規のサプライヤーについては、能力を徹底的に調査した上で、それぞれに応じた形式の設計データを提供します。

自社製造で下流部門の要求に対応する場合には、Prashant Kulkarni 博士が提案した GE のオンデマンド型の「疑似図面」(下図参照)が代表的な方法です。エンジニアリング部門のマネージャーが製品設計チームにこう伝えたといいます。「設計チームがモデルを作成、リリースするのは構わない。ただし、エンジニアたちは 2 次元図面に慣れ親しんでいる。PLM にリリースする必要はないが、何らかの形で 2 次元プリントを提供してもらいたい」その結果、中間的な疑似図面に PMI の全ビューを取り込み、各シートのビューを枠線で囲んだ図面として入手できるようになりました。

GE で導入されたオンデマンド型の疑似図面

もちろん成功事例ばかりではありません。設計部門がサプライヤーに一方的にデータを引き渡すだけで、適切にサポートしなかった場合、不幸な結果に終わるかもしれません。サプライヤーが憶測で解釈しながら 2 次元図面を再現するしかなく、高いコストが発生したり、解釈を誤ったりした事例は珍しくありません。設計の問題と経営上の打撃について顧客とサプライヤーが法廷で争った事例もあります。また、一部の工場では注文を納品するまでに赤字化し、同様の受注を断るようになってしまいました。

しかし、生産工程全体で MBD データを円滑に受け渡すことができれば、絶大なメリットがもたらされます。MBD データの典型的な用途は、機械で読める PMI です。品質検査時の 3 次元測定器(CMM)による作業を効率化できるのです。下図では、SOLIDWORKS MBD の寸法と公差を分析することで、CMM 用のプログラムを自動生成しています(情報元: Origin International の CheckMate、SOLIDWORKS に完全統合されたパートナー製品)。CMM の経路決定だけでも数時間の短縮になるでしょう。この機能の詳細については『SOLIDWORKS MBD and CMM Programming』ウェビナー(英語)をご覧ください。機械で読める PMI の詳細については別の回で取り上げます。


SOLIDWORKS MBD のモデルと PMI に基づいた CMM プログラムの自動生成

「MBD 導入における 10 の注意点」シリーズの第 1 章である「」の要素はこれで終了です。次回からは第 2 章の「プロセス」に移ります。ご覧いただきありがとうございました。SOLIDWORKS MBD についての詳細は SOLIDWORKS MBD 製品ページをご確認ください。また、Twitter (@OboeWu)あるいは LinkedIn (OboeWu)でのディスカッションにもご参加ください。

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吉田 聡

吉田 聡

マーケティング部 ポートフォリオ イントロダクション スペシャリスト