はまる (Hooked) – 設計者の視点

ワールドワイドのお客様を迎えて年に1回開催されるSOLIDWORKS Worldが、今年は米国ダラスで開催された。米国からの情報を耳にするのが比較的多い日本ではあるが、米国国内で聞くニュースは、情報量といいバラエティ性といい大量である。メキシコ国境での「壁」建設に関する政治、経済ニュース、予防接種を受けない子供の数の急増と、はしか等慢性的伝染病流行の不安、など米国全体のニュースやスキャンダル、ゴシップ。はたまた、州内の大きな事故、悲惨な事件のニュースはもとより、心が和むのは、「若干12歳の少年が、自ら設計し、3Dプリンターで自分の義足を製造する時代!」という「Impressive Kids」を取り上げるダラスのローカルコーナーか。日本にいて日本のニュース番組を見ているだけでは全く耳に入らない「ニュース」の数々である。大陸の広さ、気象の違い、人口の多少、文化の違いは、そこにいる様々な人の思考回路や行動規範に変化をもたらすものだ、と、あたりまえの話だが、改めて思い知らされる。

【新たな未来への開発社/者達が一堂に】

今回のSOLIDWORKS World Day3、3日目のゼネラルセッションでは、有力なベンチャーキャピタリストやインキュベーターとダイナミックな企業家グループがペアを組み、将来を形作るアイデアや企業を紹介する米国版「マネーの虎(Shark tank)」を模した一幕を持った。

登壇1番目は、Spark Charge社のCEO兼創設者であるJoshua Aviv氏。彼らは、「電気自動車を運転する運転手の目的地に到着するまでの不安を軽減する」ことを目標に、電気自動車用の携帯型超高速充電ステーションを開発している。

2番目は、Skelmet 社。カスタマイズされたサングラスをデザインするスタートアップ企業のCEO兼創設者Rain Wangの登壇。最先端の3Dスキャニング技術を使用し、顧客ごとに異なる顔の骨格をスキャニング、データを元にSkelmetサングラスをカスタムデザインし、3Dプリンターで製造、顧客の手元に届ける事業を紹介した。

最後に登壇したのは、Rise Robotics

油圧シリンダシステム全体を置き換える新しいタイプのリニアアクチュエータを開発している。彼らの技術の元は、運搬車両から荷物の上げ下ろしを行うリフトのリニアアクチュエータ。この技術を活かし、Arron Acosta氏(CEO兼創設者)は、海底から宇宙まで移動ソリューションを提供するRISE Cylinderを売り込む。 既に公の賞を受賞している企業もあり、米国国内からの参加者にとっては、「またか」感もあっただろう。300Kgもする充電器の小型化を進めるよりは、電気チャージステーションの開発の方を進めた方が効率的。「充電器の携帯」などという発想は浮かばない、と思ったのは狭い領土に住む日本人だからか。

【“はまった”人たちの集い】

1年に1回のこのイベントに参加するお客様は、繰り返し参加して下さるお客様が多い。このイベントにはまって(Hooked)しまうのだそうだ。それは、年に1回、この場所に集まってくる1人1人が、皆、もっと良いものを作りたいという熱意を持っており、それを感じあえる場所であるからに違いない。ただ、熱意だけではモノを造ることができないのも事実だ。このイベントの Day1では、ちょうど10年間の2009年にSquare社を創立した1人、Jim Mckelvey が登壇した。彼には、4つの信条があったそうだ。10年経過した今、それを振り返った。「狙っている機会を追い求める」というよりは、「今、ここにある問題を解決したかった」。「いつかとてつもなく素晴らしいモノを世に送り出そう」と考えるより、「早い、イイね、でいいじゃないか」。「誰よりも早く働く」よりも、「学ぶ、、いつ学ぶ」のかを大切に。最後に、「大胆(bold)に」というよりは、「やりぬく(persevere)」。という気持ちが、結果的に社会からの評価を得た、という。ガラス工芸家であった彼が、180度違う事業に乗り出せことも「人は自分が信じるのものに挑戦できる」ということに、自ら「はまった」ということであろうか。

 

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