MBD 導入における 10 の注意点: ワークフローを自動化する

以前投稿したモデルベース定義(MBD)導入に関する注意点「躊躇しない(Part 1)」において、Kevin De Smet 氏がレガシーデータに関するコメントを寄せてくださいました。「3,000 モデル分の図面があるとして、それを全部作りなおすのでしょうか?」このコメントによって、表 1 の「ワークフローを自動化する」という重要なポイントが浮き彫りになりました。現在の製造業は急速に複雑性を増しつつあります。例えば、ヨーロッパのある SOLIDWORKS ユーザーによると、社内のデータ管理システムに数百万の部品、アセンブリー、図面が登録されているそうです。こうした膨大なデータを処理するためにも、一貫性、社内標準、品質を確保するためにも、自動化は絶対に欠かせません。
表 1: MBD 導入における 10 の注意点

 

自動化の可能な領域は多岐にわたります。MBD ワークフローの例をいくつか見てみましょう。

1. 製品製造情報(3 次元の寸法や公差などの PMI)の定義と整理
まずは Kevin 氏の懸念にお応えします。大量のレガシーモデルに 3 次元 PMI を定義するのは条件次第では難問ですが、自動化を活用することで作業時間は大幅に短くなります。SOLIDWORKS MBD には「自動寸法スキーム」というインテリジェントなツールが用意されており、ASME Y14.5 や ISO 16792 などの規格を遵守しながら、3 次元の寸法と公差を短時間で自動的に作成します。ユーザーの作業は、部品タイプ、公差タイプ、データムフィーチャー、PMI 作成範囲(モデル全体または選択フィーチャー)を設定するだけです。あとは[OK]をクリックするだけ。通常は 1 分もかからずに下図のような結果が自動生成されます。このツールは部品とアセンブリーに加えて、インポートされたソリッドボディもサポートしているため、サプライヤーにとっての制約が少なく、メーカー各社の CAD プラットフォームが異なる場合でもスムーズに協業することができます。もちろん、デフォルトの公差レベルをドキュメント設定でプリセットしておくことも可能です。

自動寸法スキームは、3 次元 PMI を自動的に適切な注記ビューとしてまとめます。つまり、新しい注記ビューが必要に応じて自動生成されるのです。さらに便利なことに、一度作成した 3 次元 PMI スキーム(PMI、関連する DimXpert フィーチャー、注記ビュー、レイアウトなど)は別のコンフィギュレーションにコピーできるため、同じ作業を繰り返す必要がなく、ここでも時間を節約できますし、一貫性や品質の確保にもつながります。

このほかにも、レガシーモデルとそれに付随する 2 次元図面から 3 次元 PMI を自動作成できるツールがあります。例えば、下図は ITI TranscenData の DrawToPMI ベンチマークテストです。CATIA フォーマットのエンジンブロックに 6 つの図面シート、58 のビュー、1,000 以上の PMI エンティティが含まれており、手作業で PMI を作りなおすと 50 時間もかかるのですが、DrawtoPMI を利用した場合、所要時間はわずか 4 時間に短縮されました(自動プロセスに 1 時間、任意での仕上げの手作業に 3 時間)。

2. MBD データ管理
個々のファイルや複数のリビジョンを人手で管理するのは現実的ではありません。これは多くの企業の共通意見でしょう。モデルの一つひとつに 3D PDF を発行していたら、何百万回も繰り返すことになってしまいます。その解決策はワークフローの自動化です。SOLIDWORKS PDM は、自動化されたワークフローによって MBD データを管理します。例えば、アセンブリーのリビジョンごとに PMI や 3D PDF の更新が実行されます。特に SOLIDWORKS MBD 2016 のリリースでは、新しい MBD API コールが追加され、自動化アプリケーションのカスタマイズが可能になりました。目下、SOLIDWORKS MBD と PDM の連携強化に取り組んでいるところです。最終目標は、設計者が設計意図の具体化に集中できて、承認プロセスの管理や 3D PDF の発行に煩わされない環境です。PMI を取り込んだ設計が完成した段階で、それに対応する 3D PDF をバックグラウンドサーバーで自動生成し、関係者にも通知したいと考えています。設計のリビジョンや設計変更指示(ECO)についても同様です。

 

3. 後工程の製造アプリケーション
機械で読める 3 次元 PMI を活用した場合、後工程のさまざまな製造アプリケーションを自動化することができます。例えば、前回のブログで触れた CMM プログラムの自動生成や 3 次元スキャンの検査レポート生成、今後のブログで紹介する製造性の検証や派生物の妥当性確認です。締めくくりとして、事例を一つ紹介しておきましょう。アメリカのヒル空軍基地で実施された A-10 航空機プログラムでは、3 次元部品レポートとチューブ曲げデータを自動作成することが明示的な要件となっていました(情報元: 『Draft Performance Work Statement (PWS) For Automatic 3d Part Report Generation and Associated Engineering Services (A3DPRG) (仮訳: 3 次元部品レポートの自動生成および関連する開発業務における業務要求水準書の草稿)』、ヒル空軍基地、2014 年)。
要するに、自動化は時間と費用の削減はもちろん、一貫性、標準遵守、品質の強化にも役立つということです。市販の自動化アプリケーションで対応できれば言うことなしですが、GE パワー & ウォーターのように、ソフトウェアの自社開発環境を整備した企業もあります。目標や資源に応じて選択するとよいでしょう。次回のブログでは、物議を醸す話題かもしれませんが、「サプライチェーンへの送付データを 3D PDF のみに統一しない」について解説します。皆様のコメントをお待ちしています。SOLIDWORKS MBD についての詳細は SOLIDWORKS MBD 製品ページをご確認ください。また、Twitter (@OboeWu)あるいは LinkedIn (OboeWu)でのディスカッションにもご参加ください。

 

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吉田 聡

吉田 聡

マーケティング部 ポートフォリオ イントロダクション スペシャリスト