医療分野への進出や切削加工との連携、進化して発展する「デジタルモールド」

●医療分野への進出や切削加工との連携、進化して発展する「デジタルモールド」に要注目

ソリッドワークス・ジャパンは、2019年11月8日および12日「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2019」を東京と大阪で開催しました。今回も基調講演やユーザー講演など盛りだくさんの内容でお届けし、過去最多となる来場者を迎えました。イベントは講演だけではなく、ユーザーやリセラーによる展示ブースも大変な賑わいを見せていました。ここではその中から、スワニーが取り組んでいる「デジタルモールド」の展示を紹介します。

スワニーの展示

・スワニーってどんな会社??

スワニーは長野県伊那市にある設計会社で、SOLIDWORKSユーザー。スワニーの代表取締役社長である橋爪良博氏は、当日のユーザー講演でも登壇いただきました。協力社であるストラタシス・ジャパンは、3Dプリンタの大手であるStratasys社の日本法人。スワニーは同社やパートナー企業らと共に、3Dプリンタ製の型を使った射出成形の技術開発やサービス提供に取り組んでいます。

SOLIDWORKSユーザーの間でも橋爪氏はかなりの有名人。そのため、「デジタルモールド」のことを既にご存じという方も多いと思います。デジタルモールドは、耐熱性の材料で作られた3Dプリンタ製の型で射出成形が行える技術です。樹脂の型なので簡単に削れ、型への追加工や仕上げも短時間で行えるという利点があります。また金属製の金型と比べて型のサイズもとてもコンパクトなのが特徴なのです。

材料の耐熱性が優れているとはいえど、やはり樹脂製です。耐久性が気になるところなのですが、なんと1500ショットくらい打てるといいます。

デジタルモールドによる成型品
デジタルモールドによる成形品

・デジタルモールドとは?

スワニーの社屋にも「デジタルモールド」が設置されており、お客さんたちが利用していくそうです。射出成形をやったことがなくても、メカ設計者であれば、1日スワニーの工房にこもって、現場スタッフのレクチャーを受ければ、デジタルモールドを使った成形ができてしまうそうです。*同社ではデジタルモールド体験セミナー(有償)も実施しています。またスワニーの技術者たちも、このデジタルモールドを使って育成している、とのこと。今や、多色成形も自分でやってしまう設計スタッフもいます。スワニーではデジタルモールド以前から、スタッフにたくさんトライをさせて技術を習得させる方法で技術や育成をしてきています。最初は設計初心者であっても、スワニーでしばらく働いていれば、設計だけではなく、切削加工や射出成形まで立派にこなせる技術者に成長してしまうのです。

今回の展示では、スワニーの地元の伊那のこれまた有名企業、伊那食品工業との協業から生まれた、デジタルモールド製の医療シミュレーションモデルを披露しました。2019年度のグッドデザイン賞も受賞したとのことです。

デジタルモールド製の医療シミュレーションモデル

・拡がる活躍の場ー医療分野へ

伊那食品工業といえば、寒天の「かんてんぱぱ」が有名ですね。この臓器モデル、伊那食品工業が開発した植物由来のゲル素材を使用して成形しているのです。造形物の触り心地はひんやりぷるぷるとしていて、なんともいえない感触です。

従来は、動物の臓器や樹脂製の人工模型を用いて手術のシミュレーションをしていたそうです。動物の臓器は調達の手間や時間、動物愛護の問題などがあるため、人工模型はやはりリアルではありません。デジタルモールドでは新素材のゲルを使ってリアルに臓器を再現することに成功しています。最近は、材料を改良し、タンパク変性するようにしたということで、よりリアルなシミュレーションが行えるようになったといいます。タンパク変性は、熱を加えることでタンパク質が固くなる現象です。橋爪氏は「電気メスを入れた時に煙が出るようにすることですね」とサラリと説明していました。

デジタルモールドの特徴的、かつ大事な動きの1つとしてはパートナー企業との協業があります。医療シミュレーションモデルについては、医療ソリューションの販売に強い丸紅情報システムズが販売に携わっています。

またデジタルモールドは、プレス加工や切削加工と組み合わせるハイブリッドモールドの仕組みが作れることも特徴です。過去から町工場と連携したハイブリッドモールドの取り組みも行ってきましたが、今後はますます、パートナー企業とのアライアンスを拡大していくとのことです。

SWWJの会場では、C&Gシステムズとローランド ディー.ジー.との「ハイブリッドモールド」に関するアライアンスに関する発表もありました。ハイブリッドモールドは切削加工と連携した、アルミ型と樹脂型を組み合わせた仕組みです。樹脂型とアルミ型を一緒に使うことで、通常のデジタルモールドよりもショット数が増やせて、スピード生産も実現できるそうです。今後こちらの動きにも期待したいですね。(Yumi Kobayashi)

プレス型での活用

 

ハイブリッドモールド

■有限会社スワニー

有限会社スワニーは、現場経験豊富な技術者が3Dデータを駆使して製品設計、部品試作、製品化支援をお客様の要望に合わせてお応えします。「人の心を動かすカタチづくり」をコンセプトに最新の技術と設備を積極的に取り入れることにより、市場のニーズに合わせたソリューションを提供しております。(同社Webサイトより)

所在地:
■本社
〒396-0621 長野県伊那市富県7361
TEL:0265-73-6033 FAX:0265-73-3188
■茅野営業所
〒391-0001 長野県茅野市ちの3502-1ベルビア2F ワークラボ八ヶ岳
TEL:0266-78-6231 FAX:0266-78-6239

ウェブサイト:https://www.swany-ina.com/

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