製造業におけるサービス化とは
サービスを組み合わせることで製品に新たな価値を創出する活動のことを、サービタイゼーションと言う。
4、5年前までは、実際にサービスを中心とした戦略を策定して既に実行していた企業もあったが、ビジネスのサービス化の方向性は示しつつも具体案を模索している企業の方が多かった印象である。が、5年も経てば、見ての通り、サブスクリプションモデルが至るところで流行し、当たり前の状況になった。サービスが益々重要になっていくことは理解できても、サービスをどのように扱うかは企業にとっては重要な問題である。ビジネスのサービス化を本気で考えているのか。従来通り製品を中心としつつ、ビジネスにおけるサービスの位置付けを変えていくのか。ビジネスモデル自体をサービス化していくのか。つまり、自分達のビジネスにおいてサービスとどのように向かい合うのか、ということこそが戦略であり、生き抜いていくための論点となるのであろう。
度重なる災害復興。老朽化したインフラ整備など、今後も高い需要が予想されるのは、建設事業である。一方、この業界の一番の課題は、「労働力」。就業者は、益々減少し、高齢化が進行している現在、まった無の状態で、盛んにIT活用やAI導入を試みている。お国(国土交通省)の支援があるから、と言うのは簡単だが、情報通信技術(ICT)を活用した建設機械を開発するのは、製造業だ。そして、その建設機械は、リースや中古販売というサービス形態でユーザーに使用されていることがほとんど。なぜなら、土木建設業界を支える約500,000社のうち、なんと98.8%の事業者が中小零細企業という構造になっているからである。高い建機など購入できるわけもない。そんな業界が、成り立っている1つの理由に、「企業間のコラボレーション」がある。3K(きつい、汚い、危険)を業界内で共有しているからこその情報交換が、ドローンを飛ばした3D測量を促進し、データと設計図面から施工量を割り出し、再びICT建機に取り込むことで、半自動作業を実現させ、結果的にその業界で働く自分に恩恵が返ってくる仕組みを造り出しているからである。
製造業の多くは,ビジネスを製品ベースで考えてきたため、企業の競争優位は製品を通じて実現できているという考え方が強い。良いモノを造れば、お客様はおのずとついてくる、という話である。したがってサービスとは、製品に付随するものであって、保守(メンテナンス)、修復(リペア)、操作(オペレーション)などの側面的なサービスについては幹となるビジネスから分離した収益という考え方から離れることができない。一方で、表現を許していただけるのであれば、前述の建設業のような 3Kを逸脱するためのお客様の課題を根本から解決できるほどのサービスを提供できているわけではない、と言いかえることができる。サービタイゼーションの最終的な目的は,製品と製品に関連するサービスの提供ではなく、お客様の要望に沿って、お客様の企業のオペレーションを完全に引き受けられるようになること、であるらしい。ICT機械に取り付けられるセンサーから得られるデータは、メンテナンス時期を知らせてくれる、機械を提供する側のものではなく、この機械をこう使ったらもっとパフォーマンスが良くなりますよ、というお客様目線のデータとして使われてこそ、サービス、ということであろう。