カタカナこそ共通言語

当たり前の話ではあるが、日本で生まれたソフトウェアのUI、コマンドには、「漢字」が多用される。日本人が使うのだから日本語は当然であろう。SOLIDWORKSが産声を上げた当時、米語以外に翻訳されたのは、たった4言語。その中に日本語が含まれていた。その当時から、日本市場における潜在的な3D意識の高さは評価されていた半面、テクノロジーには妥協しない日本人が日本語UIを持っていない海外のソフトウェアなど取り入れるはずもない、と考えられていたのかもしれない。しかし、SOLIDWORKSでさえ、日本語といっても米語をカタカナにしただけというコマンドも多く、カタカナコマンドを見ただけでは、何を実行するコマンドなのかわからなかったユーザーも多いのではないかと推測する。

 

SOLIDWORKSの「ユーザーインターフェイス」の最初に記載されている「SOLIDWORKS ドキュメントウィンドウ」。何を指す言葉なのか。ドキュメントは、「設計書?」、ウィンドウは、「画面?」。要するに、SOLIDWORKSを起動すると現れる画面のことを指しており、「いざ、設計」を始める画面そのものを指しているのだが、それとわかるユーザーは、その当時、既にITに長けていた人だと思われる。それぐらい、SOLIDWORKSのマニュアルには、昔も今もカタカナが多い。笑われてしまいそうだが、当時のWindowsもしかりで、プロパティだの、カット&ペーストだの、カタカナ満載である。実行して初めてあぁ、そういうことか、と納得するものばかり。Windows環境で稼働するソフトウェアは、当然、Windows操作を知らなければ約五分の1とは言わないが、ある程度損をすることになる。フィーチャー(Feature)、コンフィギュレーション(Configuration)、アセンブリ(Assembly)、と新しいカタカナの概念。1本の線を「複写」するだけなのに、「エンティティのコピー」などという長い名前のカタカナコマンドを使う必要がある。3D CADってなんと使いづらい、と感じた設計者は多かったに違いない。

 

そんなカタカナが、今や、コミュニティの中では共通言語である。フィーチャー、エンティティ、スケッチ、パワートリム、ショートカットキー、ボディ、パターン。SOLIDWORKSが、敢えてカタカナを残してきたのは、将来、世界で通じる「言葉」になることを意図していたのかもしれない、とまで思ってしまう。ソーシャルディスタス、ステイホームから、デジタルトランスフォーメーションに、イノベーション。世の中、カタカナばかりで、わかったようなわからないような感覚が増えている。日本人なんだから日本語にして欲しい、と言う前に、自分の中で言語化すること(頭の中で考えていることを、ルールのもとで意味を持った言葉にすること)を忘れてはいないだろうか。敢えて日本語にならないカタカナは、既に世界共通の認識であり、世界で通じる言葉なのだ。カタカナに惑わされる必要もない。が、SOLIDWORKSがそうであったように(と言うのもおこがましい話だが)、世界共通の認識であるカタカナは早めに言語化して自分のものにしておく必要はありそうだ。

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