許容できるリスク(Acceptable Risk)

お屠蘇気分が抜けないうちには、景気の良い話で盛り上がりたいものだ。2019年、中国では、米中貿易戦争や減速するGDP成長率などの影響にもかかわらず、新しく60人もの億万長者(ビリオネア)が誕生したらしい。ほぼ全員が一代で富を築いた「セルフメイド・ビリオネア」だそうだ。日本における2019年役員報酬ランキングのトップは、皮肉にも、あの逃亡劇の主人公であるN社元会長。フォーブスが昨年11月に発表した「中国の富豪400名ランキング」に名を連ねるビリオネアたちは、多様なカテゴリで富を築いているが、教育分野からも新たに数名がランクインしたことも興味深い。この先、これまでには無かった知識、技術を、または隙間分野をさらに発展させていくために、「教育」そのものが進化し、伝え方自体も変わっていくはずだというチャンスを逃さなかったのだろう。国の施策が利益の追求と一致するこの国では、“高齢化社会に突入していく”という構図自体がビジネスのチャンスとなる、ということを、我々はわが身に振り返って注視すべきであろう。

同じく、昨年、「ビリオネアが成功している理由は、頭が良いからではない」というレポートも伝えられた。彼らの、巧妙なリスク管理、仕事への集中力、決断力、が富を築き、持続するのを助けているという。スマートリスク(正しいリスク)は取り、不要なリスクを取らない。常に仕事に集中しているから他人が逃したチャンスを手にすることができ、一般的な人達よりも長期的な視点で決断するという。年末ジャンボ宝くじを毎年セット(1セット10枚)単位で購入し、7等(300円)しか当たらないのに、「高額当選も夢じゃない」と思い込んで「リスク回避だ」と勘違いする筆者のような凡人とは違う。(言わずもがな、宝くじを買う、という行為は、リスクをとったのではなく楽しみだ。そんなことを比べること自体が無意味だ、とご指摘を受けるかもしれないが。)

話しを中国のビリオネアに戻そう。昨年ビリオネアにランクインした社長を持つ中国の「製造業界の企業」と言えば、CATL (Contemporary Amperex Technology Co.Ltd)がある。CATLは、電池メーカーだ。CATLが台頭してくるまでは、ある米国企業が2014年に「ギガファクトリー」なる巨大バッテリー製造工場を作り、6年後の2020年には、当時生産量の10倍にまで生産量を拡大しようとしていた。その生産能力を上回る勢いなのが、CATLである。中国では、国の政策も後押しし、EV車の販売台数はうなぎのぼり。背景には、中国の都市部における深刻な大気汚染問題があることは、想像に難くない。大気汚染問題を早期に改善するためには、日本が先行しているHEV(ハイブリッド電気自動車)技術を取り入れれば良かったのに、CATLは、EV技術へ舵をきった。2011年に設立した有限公司がとった「EV政策(新技術への挑戦)」というリスクは、十分に「許容できるリスク」であったのだろう。PLリスクや、製品リコールリスクはたまた知的財産リスクなど、製造業において高いとされてきた「リスク」とは違う次元のリスクを、製造業でさえ取る時代になった、と感じるのは筆者だけか。

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