老婆の呪面

VRとリアルを組み合わせたハイブリッドお化け屋敷が、この夏、東京タワーに出現した。(※アトラクションタイトル:老婆の呪面)。松竹株式会社は、1998年にお化け屋敷ブランド「松竹お化け屋本舗」を創設。以来20年以上にわたって、映画の美術スタッフが会場セットを作るなど、同社のリソースを最大限活用したハイクオリティなお化け屋敷を展開していた。東京タワー地下1階で開催するのは今年で5回目だそうだ。そんな松竹が、今年は、新しい企業とタッグを組んで、ハイブリッドお化け屋敷を完成させた。ハイブリッドの片腕を担った新技術は、もちろん、VRである。

【VR 今・昔】
VR技術の歴史は、1930年にさかのぼる。1960年代には、イスに座ってマシンをのぞき込むと3D映像を楽しむことができ、香りが生成でき、イスの振動、送風などの機能が搭載されたマシンが登場し、航空機の操縦シミュレータなどに発展した。一方、1960年代後半には、世界初のVRヘッドマウントディスプレイシステム(HMD)が登場した。1980年代~1990年代になり、このVR-HMDがようやく実用化される段階となったが、当時は高度な技術と高性能なコンピュータの演算パワーを必要としたため、業務用やプロフェッショナル向けとして活用されていたに過ぎない。この後、VRの世界を変えたのが、CG技術を駆使していたゲーム業界だ。ソニーが、任天堂が、1990年代後半に、本体をのぞいてゲームをプレイするタイプのゲーム機を販売開始し、VRの盛り上がりを見せた。が、いかにもVRっぽい雰囲気で登場したのだが、ゲーム機をのぞいた先にある世界は固定されたCG画像で、いわゆるVRとは違うものだった、という結末はゲーム愛好家には記憶に新しい。

【VR体験の真の意味】
VRとは、「HMDをのぞき込んで映像を見たり、音声を聞いたりするシステムのこと」ではない。被験者に、「現実世界とは別の仮想世界にいるような体験を提供すること」であり、それが可能であれば、手段は問わない。固定されたCG画像を、首の「上下の傾き」「左右の首振り」「時計回り、反時計回りの回転」さらには「体の動き」などの自由度に対応させ、現実の世界で首や手を動かしている、「被験者」に、見たことの無いCGの世界をのぞき込んでいる体験を提供できれば良い。この体験を提供するのにもっとも効果的なアプローチがHMDだったということ。しかし、このVR-HMDも、次の発展の時を迎えている。まず、動くと邪魔になる「コード」。バックパック式PCを使うことで、この邪魔な「コード」は消える。バックパック式PCは発展するのか?または、HMDがディスプレイから人間の目に映像を提供しているのに対して、神経や脳を直接電流で刺激することで、五感体験を生み出す、という技術へも発展する可能性がある。人間の感覚が、他の感覚と相互作用するという特徴、例えば、見た目が味に影響を与えるとか、音が触覚に影響を与えるなど、心理学研究における事例との融合も考えられるかもしれない。ハイブリッドお化け屋敷は、バーチャルと現実を組み合わせていることでより大きな「恐怖」を体験させることができるらしい。自社製品に二重の「品質」をお客様に体験させる技術として、まずは設計者が使ってみるべきだろう。

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