24時間働けますか – 設計者の視点
「24時間働けますか」が流行語となった健康飲料のコマーシャル(1989年)から、もう30年も経ち、当時は味も知らなかった小学生も、もうりっぱな中堅の働き盛りとなり、もしかしたら健康維持対策のために愛飲しているのかもしれない。読者の皆様の職場では、働き方改革が進んでいるのか、いないのか、残念ながら覗き見ることはできないが、残業時間の上限規制、プレミアムフライデー、テレワーク等々、ちまたのニュースを見る限りでは取り組みが進んでいるように見える。そんな時代では「24時間働けますか」というキャッチは「ブラック企業か?」と疑われるらしい。労働時間の長さを美徳としていたその当時の「バブル時代戦士」たちに印象深いメッセージと黒と黄色という強烈な色を浸透させるためのキャッチと思いきや、当時の競合他社との市場獲得バトルを勝ち抜くための包括的なアイデアだった。一般消費者向けマーケティングの絵に描いたような勝利劇である。
【10年GDP成長がない日本】
製造業では、この30年で事業所数、従業者数が右肩下がり。電子立国と言われテクノロジーで世界を引っ張る勢いがあった日本なのに、世界トップ分野が他国に奪われた。ここ10年は、GDP(国内総生産)の伸びが全くない。製造業は、他社にない「独自の価値」を造るという意味で、このGDPの値に大きく貢献してきたのに、「付加価値」の伸びがないということは、日本は、もう他には無い価値を造れなくなってきている、と言われているのか。 いや、そうは思いたくない。
【買い手からみた付加価値】
「付加価値」には、3つあると唱えた博士がいる。「機能的価値」「感情的価値」と「自己表現的価値」だそうだ。しかし、amazonのそれは、この3つの付加価値に分類することこそできるが、本を売ると言う事業ではなく、お客様が本を購入する手伝いをする、という事業をするために、PDCAを回した点が異なる例のように思う。売る側の価値ではなく、買う側の立場から見た最適値だ。製造プロセスの性能向上だけに重きを置いていれば、働かなくても良い時代で生き延びていけるだろう。しかし、世界は、想像もできないぐらいの早さで動いていることは事実だ。24時間働けるロボットでばらつきのない労働人口を補うというアイデアのままでは、持続的イノベーションの枠からは抜けられない。ビジネスの世界では、インターネットの次の「AI」に大きな期待が寄せられている。人間には考えられない何百万、何千万という組み合わせを、切り口を導きだしてくれるのがAIだ。日本のモノづくりにも新しい風が必要である。製造業の輝きを取り戻したい。