もらい錆 – 設計者の視点

金属製品からでた錆びが付着してしまい、あたかもそれ自身が錆びてしまったようにみえる現象を「もらい錆」という。樹脂や陶器は錆びないのに、カミソリの歯やヘアピンが水分の多い場所で長く放置されてしまったばかりに、洗面台やシンクに錆びがうつったようになってしまうのが「もらい錆」だ。湿気の多いこの梅雨の時期に、いらないモノをもらってしまった感じで、嬉しいものではない。これがまた、こすったぐらいではなかなか落ちない。錆が付着しているだけなのだからなんとか取る方法はあるのだろうが、カミナリの落ちる前に何とか無かったことにしておきたいものだ。

 

【異なる特性が生み出す魔法の技術】

金属は、強度、硬さや加工のしやすさから有用な材料のひとつではあるが、その弱点のひとつともいえるのが「錆」である。錆が発生してボロボロになれば、強度は保てず、役に立たない。錆を発生させない腐食の技術として「メッキ」がある。メッキの歴史はかなり古く、メソポタミア文明ごろには既に使われていたらしい。メソポタミアでは大洪水が何度も起こっていたというから、大切なモノは「メッキ」で覆い守っていたということか。蛇足だが、「メッキ」は、りっぱな日本語なので、メソポタミア文明のころに「メッキ」という言葉を使っていたシュメール人はいなかったはずだ。仏像に象徴されるように、「メッキ」は、見た目「装飾」の用途で使うことが多かった。しかし、金属で金属を覆う、という特長がその用途を様々に変化させたことはご存知の通りだ。硬度性、精密性、耐熱性、潤滑性、電気伝導・抵抗性、磁性・非磁性さらには抗菌性など、金属、非金属を問わず、異なる特性を持たせる魔法の技術である。

 

【錆びない技術に必要なこと】

「メッキ」の技術が進化する側面で、金属そのものを強くする方法も進化し、様々な特殊鋼が開発されてきた。日本は、特殊鋼とその高い加工技術において市場での競争力はあっただろう。しかし、需要者側が「高い品質」を求めなければ、逆に収益性が足を引っ張る。最近、「繊維大手のクラボウ、建設用3Dプリンター技術の事業化へ」のニュースがあった。クラボウは、2019年度内にも専用の機材を国内の工場に導入する方針らしい。国内での新設住宅の着工戸数が落ち込み建材需要の低下が予想される中で、新らしいビジネスモデルへ挑戦する。クラボウが目を付けたのは、2013年に創業したオランダの企業。「コンクリート製品をもっと安く、もっと早く」を目標に掲げ、たった3年で、機材と専用モルタルを販売できるテクノロジーを身に着けた。建設業界で起こっている変革もさることながら、日本の誇る「繊維」を手掛ける企業が、3Dプリンター事業に参入してきてくれたことで化学変化が起きることを期待したい。日本の製造業は、今日明日にも錆びてしまうような浅い技術を守ってきたわけではない。これぐらいの化学変化で、メッキがはがれることもない。ただ、長年の「材料開発」に、「変化」を取り入れられるかどうか、は新しい切り口を見つけていく上で大きな違いであることは間違いない。

 

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