ちっちゃいIoT – 設計者の視点

東京オリンピック、パラリンピックの開催を来年に控え、「おもてなしの心」をDNAに持つ日本であるが、果たして、海外からお客様をお迎えする体制は整っているのだろうか、といささか気になる。というのも、オリンピック、FIFAワールドカップに次ぐ世界三大スポーツイベント、ラグビーワールドカップの日本での開催が3ヶ月後(2019年9月)に迫っているからだ。東京オリンピックは、東京を中心に、1都、2、3県に跨る程度の会場設営であるが、ラグビーワールドカップ会場は、北は札幌から、南は熊本まで、12都市を巻き込む大イベント。オリンピックは、選手を選手村に集めることができるが、ワールドカップは、参加する選手、家族、ファンまでも一緒に、各会場を大移動する。240万人の来場者を受け入れた前回4年前のラグビーワールドカップイングランド大会。道路の交通渋滞により事前に購入した観戦チケットを使えないまま、会場近くでTV観戦したというレポートが多数寄せられたという。交通渋滞を予測して、予め公共交通機関の利用を促してはいたが、鉄道の駅では、交通渋滞を避けようと移動してきた観客で、これまたダイヤ乱れを起こしたという。島国イングランドと同じ状況にある日本。当時のイングランド運輸大臣が、「私達の管理できない問題」と公言したのはあまりにもお粗末な気もする。

 

【備品のIoT】

海外からお客様を受け入れる機会を見逃さないのが、航空会社だ。2017、2018年頃から、日本の各航空会社は、2020年を見据えた中期戦略を出し、成果を出している。航空会社は、ホストコンピュータを使うような大規模なシステムは得意だが、IoTやロボティックスといった新しい分野への取り組みはあまり進んでいなかった。海外のお客様を多数迎え入れる立場として、ゲートウエイとなる空港は今のままでいいのかという問題意識から、IT活用分野の開拓、新たなパートナーとの連携に取り組んできた。全日空は、羽田空港内で貸し出している車いすとベビーカー(以下、備品)のほぼ全てに「ビーコン(Bluetoothの信号を使って情報を発信する端末)」を取り付け、空港内にビーコンの受信機を設置して約2か月の実証実験を行った。「そんなのをIoTというのか」と思われるかもしれないが、置き去りにされた無数の備品の居場所を一元管理し、備品を探しに行くスタッフのワークを効率化した、りっぱなIoTの例だ。

 

【満足度を左右するのは・・】

小さいことではあるが、この小さい取り組みが、やがて、未来の空港の姿を変える。もちろん、備品確認には、スマートフォンのアプリが使われる。空港内に散らばっている備品は、車いすやベビーカーだけではない。「社員」もまた、「備品」として最適配置されるべきであろう。逆に、空港を使用するお客様がアプリを使うことで、即座に備品の居場所もわかるようになる。世界の空港は、どんどん生体認証システムを試験的、または正式に導入している。空港のあちらこちらに、データが転がっているというわけだ。突然、出発ロビーの保安検査場Aの荷物検査用ベルトコンベアが停止したとしよう。あらゆるデータが飛んでいる空港の1か所で起こった「備品」の不具合は、どのデータを、どのシステムで確認すれば良いのか、また、突然起こったお客様の渋滞をどのように解消し、故障の程度を把握し、復旧の予定を立てれば良いのかを瞬時で判断する。

ものを動かす基盤(プラットフォーム)と、それに繋げるべきデータが人の満足度を左右する時代である。

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