再生紙 – 設計者の視点

毎年この時期になるとSTARBUCKSの紙ナプキンのデザインが変る。今年は、「スタアバックス 珈琲」というカタカナと漢字表記のデザイン。敢えて「スター」と描かず、定型フォントを使っていない「珈琲」にもレトロ感があり、外国人観光客にもウケそうだ。今年は、この時期には珍しく、手提げバックもこのデザインに変った。STARBUCKSジャパンは、ISO14001認証も取得し、環境課題に対し高い意識を持って取り組むことを公言しており、STARBUCKSで使用される紙製品は、全て再生紙。環境に配慮した紙ということを明記するエコマークがあることをご存知の読者も多いと思うが、ここSTARBUCSでは、使用している全ての紙製品にFSCマークがついている。違法伐採されていない、適切な森林経営を行っている森林から伐採された材料、「環境配慮バージンパルプ」を用いて製品が製造されていることを証明するのがFSCマークだ。地球環境の保全に役立つことや環境保護に貢献する企業としてのイメージアップにつなげている。

 

【「再生紙」製造の裏】

再生紙とは、一度「紙」として使用された古紙を配合した、古紙入りの紙を言う。古紙パルプが、数%含まれているだけでも、りっぱに「再生紙」と言われる。再生紙の製造工程における、「除塵」については、クリーナー、スクリーンといった「機械」の技術向上で、バージンパルプ100%の紙までとはいかないが、品質はほぼそれに近づいた。
機械の技術発展の一方で、「薬品」も改良され、細かいインキを取り除くこともできるようになった。「再生紙」の品質は向上したわけだが、ペーパーレスは、益々進み、単価が安い仕事ばかりを受けざるを得ない印刷会社にとっては、高回転の印刷機の予期せぬ停止は死活問題である。改良された「再生紙」ではあるが、バージンパルプ100%を使った紙とは違う。印刷する側が使う「印刷機」にも改良が必要なはずだ。オフセット輪転機なら、汚れを感知する「検査装置」の見直しが必要だろう。ミクロン単位の極小なドットで表現するFMスクリーン印刷は、どんな紙でもいいというわけにはいかない。再生紙の品質で乾燥時間も異なるのは当たり前で、不良品は、「紙」のせいではなく、「印刷」のせいになるのが現実だ。
一方、FSCマークを使用するにはFSC認証を受けた森林で伐採された木材を流通させ加工、製造、販売、印刷に携わるすべての会社がFSC認証を受けていなければならない。つまり、この「紙」がいつ、どこの森林で伐採され、製造されたかというトレーサビリティを証明でき、かつ、印刷する側は、「紙」の品質を予め理解できる。それこそ、印刷する前に、関係サプライヤーとのコミュニケーションは概ねできている、ということだ。これは、単なる「企業のイメージアップ」戦略などではなく、バリューチェーン(価値の連鎖)とモノの連鎖(サプライチェーン)の最適化とエコシステムの構築に他ならない。

 

【イメージアップ戦略のその先を観る】

経産省では、ブロックチェーン技術を活用したデータ駆動型社会に関する調査や検討項目について報告書を発表している。ブロックチェーンと言えば、「仮想通貨」に代表されるような「価値取引」技術だけを想像しがちだが、この技術が発展すればするほど、社会に与える影響は大きい。紙の生産量・消費量が,その国の経済あるいは文化のバロメーターであるといわれていた時代は終わった。再生紙に吐き出した2次元図面は、デジタルワールド時代を迎える今、どう継承されていくべきか。十二分に検討されるべきであろう。

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