特集:3Dプリンタ造形成功のコツ 集中講座 – 第3回:形状作成編 3Dプリンタによる試作のポイントとは?

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前回は、新時代の製造の現場にとって、試作にかかる時間やコストの圧縮を実現できる3Dプリントの活用は大きな武器になるというお話をさせていただきました。
そこで今回は「試作」に焦点を当てて、3Dプリントの作業工程の(1)形状作成、(2)プリント、(3)後処理のうち、(1)形状作成 を中心にお話しします。もちろん、試作目的でない方や製造の現場でない方も、この機会に形状作成の考え方について、ぜひご一読いただければ幸いです。

初期段階の試作にはFDM方式の3Dプリンタ
現在の3Dプリント技術をものづくりに当てはめて考えてみると、製造業にとって3Dプリンタの活用領域は以下の4つに大別できます。
・ 試作
・ 治具(じぐ) / 金型活用
・ 単品製造(特注品などをひとつだけ生産するケース)
・ 量産
連載第一回で最も普及している3Dプリンタとしてご紹介したFDM方式は、上述の4つのうち試作に向いています。FDM方式は比較的コストが低く手軽に使え、手軽に試行錯誤できるためです。

製造時に工具や部品の位置を固定する治具/ 金型への活用、単品製造、そして量産と、後の段階になるほど精度や強度などの要件が厳しくなり、FDM方式以外の高額な3Dプリンタを検討する必要があります。一方、試作段階では、大まかでも一旦、形にしてみることが重要となります。このため、扱いやすくコスト面で優れるFDM方式が最適なのです。

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設計をはじめたらなるべく早い段階で形にしてみて、問題点を洗い出す。この工程を速いサイクルで繰り返すことで、競争力が高まります。
では、実際に試作をしていく上でどんなことに注意する必要があるでしょうか。

試作を通じた代表的な評価と抑えるべきポイント
こちらも第一回では少し触れさせていただきましたが、試作をする際は、その試作品を使って何を評価するのか、目的を明確にすることが大切です。試作を通じた評価で代表的なものは、以下の3つ。
1. 形やデザインの評価(形状・意匠性評価)
2. 動きなど機械構造の評価(機構評価)
3. 組み立て性の評価
評価の目的、デザインレビューに関る他部門の人が気にする点を意識することによって、試作時に注目するポイントが変わります。

1の形状・意匠性の評価を行う際は、フォルムや見栄えの再現が最も大切になります。評価する部分については、プリント速度を落として精度を高める、後処理を丁寧にするなどで、想定しているイメージに近付けることが重要です。一方、評価対象とならない部分に関しては、ディテールは大胆に省略・簡略化して、プリント時間を短縮するのもポイントです。複数の部品からなる製品の場合、部材を一体化して出力することも検討してみましょう。

2の機械の動きなど、構造の評価をする場合は、各部品がどのように連動して動くかを確認するのが大きな目的となります。スムーズに動くよう、3Dプリンタの精度を考慮に入れながら最適なクリアランス(部品同士のすき間)を設定することが大切です。
部材同士が接触して動くような場合、接触面を滑らかに仕上げることも必要になります。安定した評価をするために、3Dプリンタープラットフォームシートを使って底面としてプリントすれば、ツルツルの滑らかな面が作れます。常に使えるワザではありませんが、覚えておくと便利なテクニックです。接触面を底面として使うことはもちろん、一つの面の仕上げ作業が省略できる点においても効果的です。

3の組み立て性の評価には、穴と軸がはまりあう嵌合部(かんごうぶ)のクリアランスやねじ穴部分や接合部の仕上げも重要なポイントになります。ネジなど、実物で代用可能な部品は極力代用するなどの工夫をすることで、効率的に試作・評価をすることができます。

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意外に時間がかかる、モデル作成を省くには?
モデリング作業にはそれなりの時間がかかりますが、プリントや後処理の時間まで、トータルで見れば効率アップにつながるはずです。
それでも、少しでも省ける手間は省きたいもの。SOLIDWORKSには3Dプリント用のモデリングを手助けする機能がたくさんありますので、ぜひフル活用してモデリング時間の短縮に役立ててください。いくつか、例をご紹介します。

◆スケールの拡大縮小機能を使おう
SOLIDWORKSでは、XYZのスケールを簡単に変更することができます。大きすぎてプリントできない製品は、縮小して出力することもできます。評価の内容によってはそれでも十分目的を果たせるでしょう。スライサーではなく、SOLIDWORKSでスケーリングすることによって、必要な個所だけを追加編集することも可能です。

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◆厚みのチェックで問題を事前に特定
薄く高い壁ほど変形の原因になるため、モデルには少なくとも0.7mm以上の厚みが必要です。SOLIDWORKSでは薄すぎる箇所を特定することができます。
下図の黄色や赤色の部分は、厚みが薄すぎて精度が低くなる可能性があります。3Dプリントした試作品の評価の場合、薄すぎる部分は評価ミスにつながる恐れもあるので、修正したものを試作品として利用するのが好ましいでしょう。

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◆ディテールの省略機能で、コストと時間を圧縮
SOLIDWORKSには複雑な形状を自動的に簡略化する機能もあります。評価に直接関係しない細かなディテールや装飾を除去することで、プリントや後処理の時間を短縮できます。

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◆サポート材の必要性チェック機能で手戻り回避
サポート材が必要な箇所を自動的に割り出す機能も便利な機能のひとつです。下図の黄色、黒の部分がサポート材の必要な部分です。うっかりサポート材をつけずに気付かずプリントして失敗し、手戻りすることを避けられます。

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◆頭の中でイメージしにくい印刷ピッチもプレビューで
どのくらいのピッチで印刷すればどの程度の仕上げになるのか。なかなか頭の中でイメージするのは難しいもの。SOLIDWORKSなら印刷前にプレビューできるので、プリント後のイメージを確認しながらピッチを調節できます。下図のように曲面の多い形状は、細かいピッチでプリントしないと、左図のように段差ができてしまったりします。また、荒いピッチでプリントすると以下のようなことが原因で形状が崩れる可能性があります。
① 樹脂が固まる前に次のプリントが始まり、乾いていないのに次の層のプリントが始まり、重み等で形状が崩れる
② 樹脂は必ず収縮するため、ピッチが荒いとその影響を受けやすい
プリントに時間はかかりますが、0.1~0.2のピッチでプリントすることをお勧めします。

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「何のための試作か」を意識すること
3Dプリントは自由度が高いため、ついつい「やりすぎてしまう」ことが少なくありません。クオリティの高いプリントそのものが目的化して、モデル作成に時間を使いすぎてしまうと、肝心の評価に時間を割くことができません。

「何のための試作か」を常に意識して作業を進めることで、結果的に3Dプリントの成功率が上がり、レビューまでのスピードもアップします。道具に使われるのではなく、徹底的に使いこなすことで3Dプリントの効用をフルに活かしましょう。次回は、3Dプリントの作業工程の(2)プリント、(3)後処理について、お話しします。

注目される3Dプリントの未来に関して、下記ホワイトペーパーでさらに詳しく紹介しています。参考にぜひご覧ください!

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3Dプリントを使いこなすには、プリントの成功率が大事。そこで私も愛用する3Dプリンター プラットフォームシートをおすすめします。このシートを敷くことで1層目からフィラメントがしっかり吸着され、造形の精度が安定しました。シビアな温度設定の手間なども大幅に軽減でき、底面がつるつるとした仕上げとなり後処理の手間が減るのもうれしいポイント。忙しい設計者にこそおすすめです。

【これまでの3Dプリンター造形成功のコツ 集中講座】
第1回 :基礎編 3Dプリント成功率アップのコツ
第2回:SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016イベントレポート
第4回:プリント・後処理工程編

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