プロダクト デザイナー阿武優吉ブログ05 – 完成を目指して
グニャグニャの続き。
皆様こんにちは、阿武です。ご無沙汰してしまいました・・。定期的にブログを更新できるよう頑張りますので、引き続き楽しく読んで頂ければ幸いです。
さて今回は、完成を目指して更にグニャグニャしましょう!前回と同様に、Sub-D機能であるSOLIDWORKS Industrial Designerのフリーフォームで装飾を作成して全体の形状をまとめていきます。今回使うフリーフォームはピラミッド。用意されているのは四角錐なのですが、数値入力で設定を変更し、四角以外の多角形ピラミッドを作成することができます。今回は五角形に設定。この五角錐フリーフォームを本体の面上あるいは本体に少し食い込むように配置します。あとは簡単。ピラミッドにあるワイヤー、点や面を押したり引っ張ったり、グニャグニャしながら最初に描いたスケッチの装飾部分の外形に沿って形状を整えます。前回のような曲面形状や今回のような多面体形状は、本当にSub-D機能が便利だなーと感じます。Sub-D機能のない3DCADでも作れますが、時間がかかるので正直やりたくない(笑)。
設計者はデザインスケッチだけでは理解できない。
ちょっとここで小話を。以前もお話ししましたが、私は、設計者あがりのデザイナー。メーカーにて設計の実務経験を積んだ後にデザイナーになりました。なので、2次元で描かれているスケッチが、どのような立体物になっているのか頭の中で想像することに慣れています。しかし、今回(前回も)作っている装飾部分について、もし自分が設計者でデザイナーからこのスケッチを見せられたら、形状を正確に把握できなかったでしょう。「線の集合体で装飾?それとも多面体?多面体だとしたら、出っ張りなのかへこんでいるのか・・。」スケッチを描いたデザイナーと幾度か対話をしない限り、まったく形状を理解できません。もちろん人間として対話は欠かせませんが、この先の少子化、IT、AI化が更に進んだ社会における生産効率を考えると、この対話に費やす時間を減少させなくてはならないでしょう。もしデザイナーが3Dデータを作成し、設計者が自分の3DCADでそのデータを開ければ、説明が無くてもすぐに形状の理解ができる。更に言えば、設計者は一からデータを作る必要はなく、データを二次利用して詳細設計に直ぐに取りかかれる。あらゆる側面で時間の効率化が図れます。SOLIDWORKS Industrial Designerは未来の業務を見据えたソフトだと素直に思います。
完成させる。
さて、ピラミッドの形が整ったら、ピラミッドの先端をカットして取り除きます。フリーフォームは粘土細工。もちろんカットすることも可能です。粘土をヘラで切る感覚。まずヘラを用意します。奥行き方向でのサイズを意識してスケッチツールで直線を描きます。この線を押出してサーフェスを作ります。これをヘラと見立ててピラミッドをカット。もともと五角錐なので、カット後は五角形の面が現れます。
この面が、下絵のスケッチの五角形に近くなるようにヒストリーからフリーフォームを選択してグニャグニャを繰り返して微調整します。(ヒストリー機能:前工程に戻って編集をすることが出来るとても便利な機能。)次に本体の周囲に面取り、必要な箇所にRを付けて五角錐を融合。本体輪郭の不要な部分を取り除いた後、五角錐周囲の不要な部分もカットして全体を整えて完成!これでSOLIDWORKS Industrial Designerを使っての3Dデータ作成作業は終了になります。
どうでしたか、デザイナーが行うSOLIDWORKS Industrial Designerの一連の作業。スケッチを描いて粘土細工をする。いつものデザイン業務を単にバーチャルにやるだけ。私はこのプロダクトからSOLIDWORKS Industrial Designerを取り入れましたが、今のところ問題も無く、楽しく仕事ができています。さて次回は、この完成データをSOLIDWORKSの設計者に送る方法と、その詳細設計データを公開します。実は、このプロダクトの試作品を先日開催された「Gift Show LIFExDESIGN」で展示発表しました!皆様にお越し頂ければ良かったのですが、事前にブログでご案内できず大変申し訳ございませんでした。そこで次回、皆様には特別に展示会の写真や試作用木型の写真(レアですよ!)なども加えてご紹介します。お楽しみに!
Profile:
阿武 優吉(あんのゆうきち)
工業デザイナー
1972年1月25日生まれ
1995年 株式会社バンダイ入社。アニメキャラクターのプラモデルの設計を担当
1998年渡英
2001年 Central Saint Martins College of Art and Design大学院工業デザイン科卒業
2010年 株式会社アンノデザインオフィス設立
他種々のデザインアワード受賞経歴を持つ
【プロダクト デザイナー阿武優吉ブログ】
プロダクト デザイナー阿武優吉ブログ01 – SOLIDWORKS Industrial Designer
プロダクト デザイナー阿武優吉ブログ02 -スケッチを描こう
プロダクト デザイナー阿武優吉ブログ03 – 基本形状を作ってみよう
プロダクト デザイナー阿武優吉ブログ04 – フリーフォーム(自由形状)で作ってみた!
SOLIDWORKS Industrial Designerに関する詳細は、下記バナーをクリックしてホワイトペーパーを確認いただけます。