特集:フォーミュラカーを自作するぞ! 第三回

第三回でも引き続きWaseda Formula Projectのチームリーダーを務める鈴木峻大さん、テクニカルリーダーの小河広明さん、シャシ担当の藤井裕斗さん、マネジメント班リーダー鷲尾拓哉さんに、SOLIDWORKSを活用したフォーミュラカーの設計や解析、さらには評価の際に使用した製品についてお伝えしていきます。

チームの目標達成を支えたSOLIDWOKRS

規定以上の強度であれば、自由に設計できるフォーミュラカー。毎年改良されフィーリングも変わるというマシンの製作では、配管・電装以外の全ての設計においてSOLIDWOKRSを活用してくれているそうです。さらに、解析では強度や剛性が必要となる部品はもちろん、流体力学が絡んでくるエンジン周りにも、SOLIDWOKRS Flow Simulationを活用しているといいます。マシンを走らせて実測すると数値に変化はあるものの、方向性を見る意味ではとても便利。昨年のマシンと剛性を比較する場合でも、同じ条件で解析をすれば相関関係も分かるそうです。

また、SOLIDWOKRS Flow Simulationを使ってウィングを設計している上位校もたくさんあり、SOLIDWOKRSだけで十分完結できるスペックはあると語るメンバー。実はWaseda Formula Projectのマシンにも、一昨年までウィングが付いていたそうですが人員不足のため外し、より優先順位の高い課題の解決に取り組んだことで去年は無事完走できたそうです。

今年は去年のレースで壊れたパーツごとに担当を配置したうえで、軽量化と低重心化を目標として設計・製作を始めたという鈴木さん。特に軽くしたいパーツや、足周りも含めレース中に負荷のかかるポイントにはSOLIDWOKRS Simulationを使い、肉抜きの箇所を増減させて試行錯誤しながら決めていったと振り返ります。その際もSOLIDWOKRSの解析にはアニメーションの機能があるので、目で見てとても分かりやすかったとのことでした。すでに今年のクルマは一度組み立て、ゴールデンウィーク中に走らせフィーリングを知ることができたといいます。今年は狙った通りにクルマが出来上がってきているそうで、メンバーは去年以上の手ごたえをつかんでいました。

SOLIDWOKRS×こだわりで、30kgも軽量化!

軽量化・低重心化を目標とした今年の製作でこだわったポイントは、SOLIDWOKRSを使い数値の条件を何度も変えて解析したことだといいます。フレームのねじり剛性はもちろん、パーツも10個以上肉抜きの大きさを変えて何度も解析を試したそうです。さらに横方向へ力を加えた際の横曲げ剛性や、コックピット周りの配置も6種類ほど検討しながら解析を行って最適解を目指したとメンバーは語ります。また、去年は駆動系の部品の解析に時間をかけなかったため、大会で問題が発生したそうですが、それを教訓に今年は足回りと駆動系の部品にもこだわって専任の担当を置き、例年の10倍以上も解析・検討を繰り返したそうです。
その結果、去年と比べてどれくらい軽量化できたのかを聞いてみたところ「約30kg軽量化できた」という返事が返ってきました。去年の部品の重量測定を行い、過強度・過剛性と思われる部品をピックアップ。次にこれくらい軽くしたいという目標値を出し、調整範囲をあらかじめ決めてから設計に入ったことも現実的な軽量化を達成できた要因だと振り返る鈴木さん。265kgから235kgへと軽量化したマシンに大きな期待を寄せていました。

テープがメンバーの時間の使い方を変えてくれた!

人員が少ないこともあり、溶接などは外部にお願してコストを使うと決めたため、去年よりも製作費がかかったというフォーミュラカー。そうした中でも、スポンサーの好意で提供された製品によって全体コストや製作時間を抑えることができたといいます。サポート企業から提供を受けた接合テープは、フォーミュラカーの先端に取り付け衝撃を吸収するインパクトアッテネータの製作時間の短縮や信頼性の確保にとても役に立ったそうです。
インパクトアッテネータは一般のクルマで例えるとバンパーのようなもの。正面からぶつかったときに潰れて衝撃を吸収する構造を、マシンの先端に取り付けることが大会のルールで義務付けられています。従来はリベットで接合して強度を保つという考えがあったため、テープで補強する発想がなかったと語る藤井さんでしたが、去年はリベットをたくさん打って手間がかかっていたこと。そして今年は軽量化を目指して構造を変えたかったという思いから、超強力両面テープへと替え実験を行ったそうです。
実験は超強力両面テープで補強したインパクトアッテネータに衝撃を加え、大会の規定を上回る衝撃に耐えられるかが焦点でしたが、無事衝突のエネルギーを吸収し規定値をクリアできたそうです。去年はリベットが衝撃の最中に切れて外れてしまう問題もあり苦労したそうですが、そのようなこともありませんでした。また、インパクトアッテネータのように、壊すためのものをテスト用に何度も作るのは大変なので、こうしたパーツの製作時間が短縮できることはとても嬉しいといいます。空いた時間で他のパーツの設計に手を回すことができ、今までは授業の無い土曜日にしかできなかった製作を、授業のある日の空き時間でもできるようになったことはとても大きかったそうです。さらに、実験で十分な強度があると分かった超強力両面テープを、溶接が終わっていない箇所に仮止めとして使用したり、現場での応急処置にも使えると期待を寄せているそうです。

 

ここが良かったSOLIDWOKRS

フォーミュラカーの設計や解析において活躍したSOLIDWOKRS。その他にも使用していて便利だなと感じたポイントはあったのでしょうか。メンバーに聞いてみました。
「SOLIDWOKRSのデータをそのまま外部に渡すと、部品になって返ってくるので便利だった」相手先がSOLIDWORKSを使っていなくても、無料ビューアのeDrawingsを使ってもらえば、データを読み込むことができるし、メールでやり取りできるまでサイズを小さくすることもできるので、とても便利です。また、有料版eDrawingsに搭載されたVR機能を使えば、下の写真のように現実の風景の中に設計データを入れ込むことができ、実際に制作する前にイメージがつかみやすくなります。

「フォーミュラカーの完成イメージをスポンサーに伝えるとき、かっこよく見せるのにレンダリングの機能が役に立った」今回Waseda Fomula ProjectチームはPhotView360を使ってレンダリングを行ったそうですが、今年度の学生版から簡単に使えるようになったSOLIDWORKS Visualizeも使ってみたいということだったので、来年はSOLIDWORKS Visualizeでレンダリングしてさらにカッコイイマシンをかっこよくレンダリングしてほしいですね。

「SOLIDWOKRSの解析で得られたデータを、そのまま大会の運営に提出する資料として使っている」各パーツごとの詳細なデータは2000ページ以上になるそうです。SOLIDWOKRSで設計、解析すれば簡単に資料作成もできて、使い勝手の良さを感じているメンバーが多いようでした。

また、「Waseda Formula ProjectとしてSOLIDWOKRSのライセンスをいただいており、チーム全員でデータを共有できるのですごく助かっている」という鷲尾さんは、他のソフトと比較したとき、スケッチベースで描いてモデリングが簡単にできるので、早く使い方を覚えられるといいます。Waseda Formula Projectを支えるSOLIDWOKRS。今年9月の大会でどのような結果が残せるのかとても楽しみですね。

いよいよ今年の全日本学生フォーミュラ大会が、来月9月5日から4日間静岡県のエコパ(小笠山総合運動公園)で開催されます!今回取材に応じてくれたWaseda Formula Projectを初め、多くの学生チームの1年間の成果を見られるのが楽しみですね。

【特集:フォーミュラカーを自作するぞ!その他の回】
フォーミュラカーを自作するぞ!第一回
フォーミュラカーを自作するぞ!第二回

SOLIDWORKS Japan

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