悩む、考える
干ばつ、山火事、水不足、洪水など、地球温暖化によって激甚化したと考えられる異常気象により多くの被害が世界各地で発生している。毎年8月下旬には銚子漁港で水揚げされたサンマを刺身で食べていたのに、と懐かしむ。銚子港では、近年、2022年にサンマの水揚げが初めて「ゼロ」になり、翌年2023年11月中旬という冬の時期に2年ぶりの水揚げ。日本一のサンマの水揚げ量を誇った港はこの変化を重く受け止めている。最近では、北海道の「ブリ」の豊漁のニュースが後を絶たない。北海道の特産品であるサケの漁獲量は2002年をピークにほぼ減り続け、逆にこの頃から既に、ブリの水揚げ量は、右肩上がりで増えていたという。サケとブリの単価の違い、保存、処理、加工の違い、さらに加工技術に熟練している業者の多少。ブリになじみのない北海道にとっては、同じ定置網にかかってくれるなら、断然サケのほうが嬉しいわけだ。ただ、兆候は、既に20年も前に出ていたのだから、この間、「異常(正常ではないこと)」として、ひとくくりに取り扱ってきた代償は払わなければなるまい。
過日、「愛するもずくでは食べていけない」と題する、もずくの収穫量(2023年)全国の99.5%を誇る沖縄県の漁師のニュースを見た。365日、ほぼ休みなく毎日6時間海に潜って働いても確定申告で提出した年間所得は、たったの54万円弱だったという。絶対においしい最高のもずくを消費者に届けたいと切望する漁師が、一転、スーツを着て企業を回り営業。さらには、収穫現場を体験するツアーコンダクターまですることになる。このストーリーには、TVドラマにもなったファーストペンギンのモデルになった人物が、一役かってはいるのだが、そうだとしても、下ばかり向いて悩んでいただけでは何も発奮しなかった、と言う漁師のコメントは意味深い。
2つの話題の共通点は、当事者は悩んでいる、ということにある。誰しも経験があると思うが、悩み始めると、とにかく、目先の、すぐに使えそうな解決策を優先してしまうことが多い。製造業の悩みも同様だろう。過去のやり方をただ踏襲するだけでは、適切な手を打てない場面が増えている昨今、益々厳しくなる予算や納期、人員にも対処するために様々な工夫をしなければならない。加えて「革新的な製品開発を」という経営層からのプレッシャー。言うは易く行うは難し、である。ターゲットを設定し、収益モデルを考え、いかに製品やサービス、付加価値を提供していくのかを形式化することが重要である。それも理論的に。1人で悩んでいる暇はない。問題そのものを突き詰めて検討し、曖昧な部分をできる限りなく0に近づける。必要な情報を収集し整理する。手順を踏んで考え、解決策を導き出すことこそ、設計者のやるべきこと。そして、解決策はたった1つしかないのか、と考えられるチームこそ強い。