User Interview「3D設計、解析において大切なこと」- 飯沼ゲージ製作所
「SOLIDWORKSユーザーインタビュー」今月は、現役の設計者として長くお仕事をされ、設計部門の管理者、エンジニアの採用活動も経験、そして教育機関でも学生へ3Dスキルとその活用についておしえている飯沼ゲージ製作所の土橋美博さんに、3D設計と解析において大切なことは何か、お話を伺います。
株式会社飯沼ゲージ製作所 経営企画室 経営企画課 課長 土橋美博氏
液晶パネル製造装置を主体に手掛ける株式会社飯沼ゲージ製作所で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進。3DCAD歴は20年。SOLIDWORKSユーザーグループのリーダーもつとめる。
3D設計、解析において大切なこと
製造業の企業において開発設計は言うまでもなく命綱です。現在・過去の設計データもその企業にとって大切な資産です。3Dの活用は企業の資産活用そのもの。企業にとって、3D設計をどうすすめるのか、その3Dデータ資産管理をどう考えるのかは、その企業の開発姿勢そのものでもあります。
一方で設計データの管理というトピックスとなると現場にとってはとたんに重いテーマになります。それはなぜでしょう。2D/3Dともに、複雑で精緻な設計データ、そしてその煩雑な版管理。これらの作業の平準化、標準化の難易度が高いこと。このことが3D設計やそのデータ管理を企業において属人化させてしまう最大の理由です。3DCADの活用スキルは奥が深い。が、その運用に至ってはさらに社内での技術継承が難しいテーマでもあります。シンプルに、もっと軽量に、とはいかないのが3D設計データ管理なのです。3Dデータの管理は、いつでも設計の現場を悩ませます。ファイルネームの付け方のルール1つとっても、関わる設計者の人数が多く、ルールを周知したり守ってもらうことはなかなか簡単ではないからです。
自社の設計ルールづくりが大切
SOLIDWORKSのPDMデータ管理製品は、CADデータの管理にFocusした、必要最低限の機能をもつ製品です。しかし、そうであってもやはり純粋に設計以外の知識も少しばかり必要で、データ管理運用をうまく廻している企業にお話を聴くと、やはり専任者を置く、あるいは設計者と兼任であってもデータ管理に強い人材を育成しているのです。「版管理までやる」「承認プロセスを廻す」シンプルにその会社で実現すべきことを当初明確に決めることがそのスタートで大切だと私は思っています。そしてできる限り少ないルールで、運用できる人を少しづつ増やしていくこと。これが持続可能な3Dデータ管理のポリシーには不可欠です。
SOLIDWORKS社が最近提唱してきているクラウドベースの製品群「3DEXPERIENCE」製品を活用したデータ管理、クラウドリソースを活用しての解析も実現してきています。ここについては、2021年11月に開催された3DEXPERIENCE World Japan でソリッドワークス・ユーザー会のメンバーが「3DEXPERIENCEは本当に使えるのか?検証」したセッションがあります。正直に言えば企業での実用性についてはまだまだだと言わざるを得ません。ですが、日本各地の遠隔間のやり取りで、数カ月にわたっての設計PROJECTをすすめ、実際にモノができあがったという点では、このPlatformの今後の可能性には大きく注目し続けたいところです。これから世界中で3DEXPERIENCEを使っていくユーザーが増える中で、これらが今後改良されていき、シンプルで、さらに使い勝手のよいインフラとなってくれることを願っています。
クラウドへの期待:解析データ共有
みなさんは、SOLIDWORKSで解析をした後、どのように解析結果を共有していますか?たとえば社内から解析依頼を受けた時、私はこれまでは解析結果をPPTにシンプルにまとめて、フィードバックしていました。SOLIDWORKS Simultionにはレポート機能があるのはもちろん知っているのですが、試行錯誤の結果、シンプルに要点だけを明確に伝えるには、PPTで解析結果を共有しています。これは私のやり方に過ぎませんが、このシンプルさがPlatform上で得られたらよいのに、といつも思います。
解析を実行しているみなさんならわかることですが、Simultionで解析を走らせるとその数だけ解析スタディが生成され、PCの中にもデータがたまっていきます。個人のスマホの中に写真がどんどん溜まっていくように、仕事用の個人PCの中には解析スタディが一杯、という方も多くいらっしゃるはずです。そういう時はクラウドの出番では?もちろんクラウド上に無限にデータをUPするわけにもいきません。
解析に関するバックデータをクラウドに自動保存できたらいいのに。必要な結果だけをすぐに呼び出せたら便利なのに。と思います。その時のコミュニケーション履歴、つまり誰に、いつ、その解析結果を送ったのかという情報も付随してクラウド上に残せるなら、私たち設計者がよく依頼される過去データの探し物に費やす時間は大幅に削減されるのではないかと期待してしまいます。
啓蒙活動も大切
地元の教育機関とご縁があり、私は数年前から長野県の南信工科短大では、SOLIDWORKS、SOLIDWORKS Simulationを使用して、設計者教育を行っています。企業に属しながらの彼らとの交流もまた楽しいものですが、来年は、地域のサポート企業と、学校を結ぶ企画として講習会を実施する予定です。理由の1つは、せっかく学校で3D活用できるスキルを学んだ学生達が卒業後地元企業で設計の職に就くと、彼らは3DCADを操れるのに、実際実務では2DCADからはじめなければならない現状がまだまだ多いのです。教育機関では地場企業に就職してらいたいと、学生達にSOLIDWORKSの認定資格取得なども推奨します。学生達に地域企業に根付いてもらうためにも、3次元CADを幅広く活用してもらえるよう地場企業への啓蒙、理解を得ることも欠かせません。
地域の教育機関と企業との連携などもまた機会を得ましたらお話ができたらよいと思っています。
製品に関するお問い合わせは、お気軽にこちらまでどうぞ。3DEXPERIENCE Worksででできること「3分動画」がこちらからご覧になれます。