MBD 導入における 10 の注意点 – 躊躇しない (Part 2)
前回の「躊躇しない」(Part 1)ブログでは、MBD 導入がなぜ急務なのか、どうすれば上層部のサポートを得られるのか、どのような具体的なメリットがあるのか、どのような懸念があるのか、といった疑問点に触れました。今回も引き続き、一般的な反対意見を見ていきます。
本当に 2 次元図面から転換することはできるのか
次のような疑問を抱く人は多いようです: 2 次元図面は 200 年以上使われてきた。役立っているし、定着もしているのに、MBD に差し替えることなど本当に可能なのか? その答えは言うまでもなく「今すぐには無理」です。3 次元 CAD が使われはじめて 30 年以上が経つにもかかわらず、未だに 2 次元 CAD が世界の CAD 市場の半分を占めています。変化とは時間をかけて少しずつ進むものなのです。だからと言って、新しい技術の価値を過小評価してはいけません。
新しい技術を確実に浸透させるには、従来の使い方を軽んじるのではなく、適切にサポートしながらも、より多くの作業を効果的に、短時間、低コストでこなせるようにすることです。寸法、公差、注記、ビュー、テーブル、さらにはシートのレイアウトまで、MBD は 2 次元図面から必要な手法を次々と取り入れることで、円滑な転換に向かって着実に成長しています。「まず前提として、MBD に切り替えても何かが失われたりはしない」というシンプルな一言で、懸念を大幅に減らせるのではないでしょうか。それに加えて、3 次元で表すと設計意図がより直感的に伝わり、曖昧さがなくなります。しかも、回転、機械で読み込める PMI、測定、相互参照、アニメーションなど、デジタル機器によるダイナミックさ、分かりやすさ、各種機能も加わります。正確に言えば、MBD 導入とは 2 次元図面から転換することではなく、2 次元図面をアップグレードすることなのです。同様にアップグレードされた技術の例を表 1 にまとめました。携帯電話の場合、固定電話の全機能をサポートしながら、移動性やインテリジェントなアプリケーションなどが加わりました。デジタルカメラは、フィルムカメラの全機能を保ったまま、さらに多様な機能が搭載されています。この 2 つのアップグレードが成功したという事実に異論はないでしょう。MBD でも同じです。
製造現場のデジタル機器を大量に買わなければならないのか
このような疑問が浮かぶのは、図面レスとペーパーレスを混同しているからです。この 2 つについては解説したブログ(英語))がありますのでで、ここでは簡潔な答えにとどめます。購入の必要はありません。デジタル機器があるに越したことはないものの、必需品というわけではないのです。MBD の狙いは 2 次元図面のアップグレードですが、それはプリントアウトの排除とは異なります。既存のプロセスを紙ベースのまま維持したい場合でも、MBD の効果は十分に発揮されるため、工場のデジタル機器に巨額を注ぎ込む必要はありません。もちろん長い目で見れば、デジタル機器がある方が MBD の可能性を最大限に引き出せることは確かです。
サプライチェーンにも同時に MBD を導入できるか
MBD は単独では意味を成さないので、これは当然の懸念だと思います。外部と連携するためには、MBD の成果物をサプライチェーンに受け入れてもらうことが不可欠です。意外にも、この新しいアプローチに対するサプライチェーンの姿勢は一般的なイメージよりも柔軟なようです。いくつか例を挙げてみましょう。
2014 年、アメリカのメーカーが SOLIDWORKS MBD に大変興味を示し、3 つの部門を対象に 3 種類ものプレゼンを行うことになりました。製造・検査、サプライヤー、そして設計です。このメーカーから 2 次元図面の代わりに MBD の成果物を渡されることになったら、サプライヤーはどのように反応するのか。私としてはプレゼンしてみるまで見当がつきませんでした。ところがデモを終えてみると、特に 3D PDF のデモの後でしたが、サプライヤーは 3D PDF の受け取りを快諾しただけでなく、自社の MBD 導入まで検討しはじめたのです。
別のエピソードもあります。2009 年、ある企業が外部の機械工場に CAM (コンピューター支援製造)を導入させました。SOLIDWORKS のネイティブデータに基づいて情報交換するとともに、CAM 利用を促進するために低次元化された 2 次元図面が提供されました。どの工場も当初は抵抗しましたが、契約を取るためには承諾せざるをえません。ところが、新しいアプローチを数回実施してみると、試作でも本生産でも見積もり、プログラミング、引き渡しの所要時間が短縮されました。膨大な作業を抱え、1 日 2 シフトで稼働していた現場にとって、最重要課題が解決されたことになります。さらに、このアプローチが通常業務に組み込まれた後、ある工場が次のように提案したのは印象的でした。「すべての情報を 3 次元で提供してくれませんか? そうすれば 2 次元図面が要らなくなるのですが」ポイントは、これらの工場が大企業ではなく、NC と CAM を 1 台ずつしか持たない社員数名の中小企業だという点です。
事例の紹介はこのくらいにして、数字のデータも見てみましょう。アメリカ国防総省は、早くも 2009 年の時点で、数百社のサプライヤーを対象とした調査を実施していました。この調査によると、生産施設を MBE 環境内で協調的に運営することについて、68% のサプライヤーが前向きであると回答しました(情報元: 『MBE Supplier Capabilities Assessment (仮訳: サプライヤーにおける MBE 能力評価)』、国防総省、2009 年、サンプル数: 445)。また、2012年の同調査では、89% のサプライヤーが 2 次元図面よりも MBD の方が設計意図を正しく伝えられると回答しました(情報元: 『MBE Supplier Capabilities Assessment』、国防総省、2012 年、サンプル数: 46)。
要するに、サプライチェーンは MBD という方程式の重要な一要素です。ぜひサプライヤーを巻き込んで、オープンに話し合ってみてください。安定的な支援を心がければ、驚くほどの柔軟性を見せてくれることと思います。「躊躇しない」の題材はこれで終了です。次回は人にかかわる 2 つめの注意点「導入推進チームを設置する」に移ります。SOLIDWORKS MBD についての詳細は product page (製品ページ)をご確認ください。また、Twitter (@OboeWu)あるいは LinkedIn (OboeWu)でのディスカッションにもご参加ください。