本物の機能
酷暑のせいで網ガラスが割れる、というニュースが多く聞かれる。冬場、直射日光による高温部、サッシに覆われた低温部、外気温と室内の気温差が大きくなるという寒冷地では、網ガラスが割れる、というのはめずらしことではない。が、夏の暑い時期に、場所を問わず網ガラスが割れるということは、直射日光を浴びるガラス中央部がよほどの高温になっているということが予想でき、温暖化の影響と言わざるをえまい。昭和初期の防火意識の高まりと、製造技術の進歩によって、網ガラスの普及は加速。防火地域や準防火地域では設置が義務付けられたこともあり、未だに網ガラスを使用している建物も少なくない。火災時はガラスが割れても、中の金網が破片の飛散を防ぎ、延焼を遅らせる効果があり(防火)、割れにくいため防犯効果も期待でき、地震などの災害時には、ガラスの飛散を防ぐため二次災害を防ぐ(防災)など、3役をこなす建材だけに、被害のニュースだけがクローズアップされるのもなんだか寂しい気がする。
釈迦に説法ではあろうが、温度変化によって生じる熱応力は、機械設計において重要な鍵である。熱による部品の変形および繰り返し受ける温度変化による部品の疲労、最悪は破損。部品膨張による部品どうしの干渉。機械そのものの安全性を損ない、品質に関わる。固定されていなければ、温度が変化しようが熱応力は発生しない。固定されていない部品など皆無であり、全ての部品が同じ材質で作られていないからこそ発生する問題である。お客様の工場の温度管理は、どうなっているのか?例えば、工作機械周囲の温度は一定なのか(最適温度20℃±1℃推奨))?直射日光が当たるような窓の近くに設置されていないか?天井の低い場所に設置されていないか?エアコンの温冷風が直接機械に当たっていないか?などなど、高品質な機械を使っていただき、高品質な部品を製造いただくためには、機械の設置についても、十分な配慮をしてもらわなければならない。機械を設計している設計者だからこそ、使用する側にも配慮が必要なことがわかるのかもしれない。一方、窓ガラスを使っている庶民全てが熱応力を知っているわけでもないし、ましてや、太陽光で壊れるなどということは想像もしていない。何か、素人でもわかるアラームを発信することはできないものなのだろうか。
便利な現代。メカニカルスイッチ的な昭和のスイッチは、全て電子回路に置き換わった。「叩く」という必殺技は通用しない。もちろん、「叩く」ことが決して機械にとって良いことではないぐらいのことは理解していたつもりだが、叩くことによって復活したテレビ、ラジオ、なんなら、パソコンや車(スターター)まで、息を吹き返した瞬間の歓喜に、忘れられない思い出がある。昭和の時代は、Google先生もいなかったが、この「叩く」という作業だけが唯一、藁をもすがる状態の庶民を救ってくれた。「!!機能、%%機能、##機能」と、機能だけを並べて〇X評価する時代は過ぎた。顧客が期待しない多機能を好む、という日本企業最大の弱点。これを逆手に、戦うことができる機能、を市場にアピールすべきである。設計者は、いつの時代も庶民の味方であって欲しい。




