Co-Design(コ・デザイン)
インバウンドによる国内消費額の右肩上がり傾向が続いている。「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあってか、外国人の訪日で期待することの中に「日本の酒を飲むこと」も少なくないようだ。多様な日本酒を探索すべく、単に日本酒を飲むだけではなく、酒蔵めぐりや、日本酒の製法見学などが組み込まれた「テーマ別ツーリズム(主題(テーマ)をもった観光や旅行)」も人気があるらしく、地域の観光が活性化しているらしい。一度日本酒のうまさを知った観光客が、自国に帰国してECサイトで購入するとか、逆に、自国で呑んだ日本酒に興味を持って日本に行きたいと思う、とか、相乗効果も期待できるというところか。釈迦に説法ではあるが、酒は、職人集団による専門的な訓練を受けた人によってより繊細に仕上がる。近年では、そんなプロフェッショナル達が、年に1回開催されるお酒のコンテスト(全国新酒鑑評会)で金賞を獲得するために、コミュニケーションを図り、新しい味造りを追及することもあるらしい。お互いの技を尊重し、知恵を出し合って共創するアプローチの模索である。
過日、人々X行政が、「クリエイティブの玄関口になる」をコンセプトに「長浜カイコー」なるプロジェクトを成し遂げたというニュースに出会った。第三セクターが営むカフェや飲食店が閉店となり、長い間、次のテナントが入らず、行政がコミュニティセンターなる掲示板に屋根をつけたような箱を作るというのはありがちな光景。一方、長浜カイコーは、通常の建築設計では考えられない、「施主から条件が与えられない」「施設の用途や予算が決まっていない」「運営者が曖昧」という、ないない尽くしで始まったプロジェクトだったらしい。だからこそか、ここにはCo-Design(コ・デザイン:参加型デザイン、協調的デザイン)と呼ばれる一連の取り組み過程や考え方、が取り入れられたそうだ。前述の通り、「用途」も決まっていない空間に什器や照明と言ったハード面だけとりあえず配置したところで、誰が使うのかというソフト面が検討されなければ宝の持ち腐れになろう。今日では、感染症なども考慮すべき大きなポイントであるし、実空間とオンラインが融合できる場でなくてはならないのは当然のことだ。などなど、デザインの際に考慮すべき問題は、一方的に決められない要素で埋め尽くされていて、解は常に現在進行形で変化し、未来にもマッチしなければならない、という、とてつもなく複雑なものなのである。これら全てをデザインするということは、もはや、デザイナーと呼ばれる専門職人1人で魔法のように解決できるものではない。長浜カイコーの場合は、そこを利用する人々、運営者、行政、を巻き込んでということになり、一般的には、作る人、使う人、そこに利害関係のある全ての人々が、共に当事者として取り組むアプローチが必要だ、というのが Co-Designの考え方なのである。
デザイン。Designは、ラテン語から変化した単語で、言語の意味は、「ある問題を解決するために思考、概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現すること」である。Co-Designを調べているうちに、タイミング良く?Co-Design Challengeプログラム (参照:https://www.expo2025.or.jp/co-creation-index/co-design-challenge/) なる大阪万博の取り組み記事に遭遇した。第2弾募集(Co-Design Challenge 2024)では、モノの開発に加えて、新たに「地域誘客」の観点でそれらのモノが作られた生産現場や工房を公開し、来訪者にものづくりを体感してもらう取組の募集もあった。しばしば専門家はその専門性に特化している故に、人に指示できるという強い立場に立ちがちで、他者の意思などを問うプロセスを飛ばしてしまうことがある。だからこそ、設計者自身が、多彩なプレーヤーと出会い、課題に取り組むプロセスを一緒に共有すること、が将来のより良いくらしをデザインすることにつながるのだと感じる。そして継続的にテストされることで、課題が変化していることを確認でき、次なる適応をする。長浜カイコーの改善は止まらない。