一意専心

海外からの旅行客が目立つようになった。JTBは、2024年、日本から海外へ旅行する人は、2019年の7割までは復活すると見ている。コロナ明けで活況だった「リベンジ消費」も、物価高、円安などが続いているせいで小休止といったところか。一方、訪日外国人の数は、新型コロナウイルス禍前の2019年を4%も上回る3310万人となり、1981年に同社が調査を開始して以来の過去最高となることを予測している。中でも、クルーズ船ツアーが、コロナ禍の落ち込みから急回復し、主な顧客層である高齢者の増加という追い風にも乗って好調のようだ。合計約3,700人越えの乗客、乗員が横浜港で下船できなかったあのダイアモンド・プリンセス号も昨年、日本発着の運航を再開している。

造船大国と言われた日本も、今では、中国、韓国に次ぐ第3位国に転落。造船大国の地位を守っていくためには競争力のある船の開発は必須である。なぜなら、日本が得意としてきた造船技術は、主に商船であり、現在需要が高まっているのは大型客船だからである。昨年は、クルーズ船運航各社が新造船をデビューさせた。モナコに本社を置く「シルバーシークルーズ」は、燃料電池とバッテリーを組み合わせたハイブリッド電源を搭載した客船を新造船し、クルーズ業界では初めて、港での排気ガスフリーを実現。LNG(液化天然ガス)を主な燃料としたこの新しいハイブリッド技術は、港で役立つだけでなく、1室あたりの温室効果ガス排出量を全体で40%削減することができるという。国際海事機関(IMO)が、2018年に温室効果ガス(GHG)削減戦略を採択し、2050年までにGHG排出量を2008年比で50%以上削減するという目標を掲げているのだが、本船は、このIMOの要求値よりも約25%高い値を達成することが見込まれているようだ。SDGs持続可能なクルーズラインの最前線に立つ、と鼻息は荒い。この船の建造は、ドイツのマイヤー・ヴェルフト社が引き受けている。余談ではあるが、日本では馴染深い客船「飛鳥」の後継船も、マイヤー・ヴェルフト社が建造し2025年に就航される予定らしい。国際海事機関(IMO)の掲げた目標により、各船会社は2050年までに現存船を総取り換えする方向に動いている。この需要拡大をうまく捉えたいものだ。

話は変わるが、ミッキーマウスとミニーマウスのデビュー作である「蒸気船ウィリー(1928年)」をご存じだろうか。この蒸気船には、プロペラがついている。船にプロペラ、という技術は1800年後半には確立されていた。日本には、このプロペラの技術がある。1900年代初め、理論と実験からプロペラの性能が理解されるようになると最適設計への関心度は一気に高まった。理論の発達により1900年半ばには、画期的なプロペラ設計ができる状況ではあったのだが、微分や積分の手計算は現実的ではなかった。しかし、時を同じくして、コンピューターおよび数値計算技術の急速な発達により、日本の造船界に本格的なプロペラ理論計算法が浸透する。昨年、船舶用プロペラ大手のナカシマプロペラ(岡山市)が、国内最大級のX線コンピューター断層撮影装置(CT)を使った非破壊検査サービスに乗り出した。自社が開発製造する銅合金を材料とするスクリュープロペラを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に変更していくことにより、巨大なプロペラ用の検査用装置を作ったことがきっかけ。安さを売りにする韓国、中国と戦うために、この縦7.8m、横4.8m、高さ5.4mの巨大X線CT装置を活用して、新たな収益に結び付けたい考えだ。一意専心。一つのことに専心してきた努力は、必ず実を結ぶ。

SOLIDWORKS

SOLIDWORKS

Dassault Systemes SOLIDWORKS Corp.は、データの作成、シミュレーション、管理、テクニカル コミュニケーション、電気設計、ビジュアリゼーション、コラボレーションを行い、エンジニアリング リソースの革新と生産性を達成するための完成されたソリューションを提供しています。