人生100年時代

今年もあとわずか。毎年、「今年こそ」と思っているつもりでいながら振り返ると平凡な1年が過ぎていることが多い。何もなかったわけではなく、それなりにイベントは起きているし、その対応に忙殺されることもある。しかし、家族が1人増えた、といった一大イベントが起きたわけでもない場合は、一過性であり後々懐かしい思い出の1ページを飾るかどうかもわからないちっぽけな記憶に留まる。それにも関わらず、イベントには迫られた「意思決定(決断)」をしなければならない時が往々にしてある。仕事において、意思決定を迫られることの少ない一般ピープルにとっては、自分の意思決定の基準がどこにあるのかに戸惑う。起きるイベントが多ければ多いほど、意思決定の機会は増え、勉強の場は増える。それも人生か。年末にあたり、1年間のイベントを振り返ることは自分を成長させるための勉強の時間とでもとらえて、新年を迎える前向きな気持ちでいたいと思う。

人生100年と言われる時代になった。人生だけでなく、世界中のどこを見渡しても、日本ほど長寿企業が多い国はないらしい。日系BPコンサルティング・周年事業ラボ(https://consult.nikkeibp.co.jp/shunenjigyo-labo/survey_data/I1-06/)によると、2022年時点で創業100年以上の企業数は世界1位およそ37,000社、世界の創業100年以上の企業総数に占める比率は50.1%にもなる。長寿企業の多い理由として、日本が島国で他国との競争ではなく、国内企業がサービスやモノを国民に提供することで社会が成り立ってきたから、という人もいる。お客様を大切にし長く信頼されることが、日本企業にとって重要だったということであろう。しかし、ただそれだけの理由で100年以上もの間、存続し続けられるのだろうか。1919年創業のオリンパス株式会社は、2019年100年企業に仲間入りした。顕微鏡が初めて日本に輸入されてから約170年が経過しようとしていた頃、「国産の顕微鏡を作りたい」という夢を持った創業者は、その半年後に、「旭号」という国産の顕微鏡を世に送り出した。「外国製のものは良い」と言われる典型的な製品であった顕微鏡は、国家方針として国産品の愛用が推奨されたこともあり、国産技術が発展することになる。時を同じくして現ニコンの前身である日本光学工業株式会社も設立された。そしてこの国内の光学技術は、日本人の技術者はもちろんだが、海外の技術者を招き、その技術の交流から発展したとも言われている。

意思決定を下して前進してきた先人の後世に残る逸話は様々あろう。「電気」が一般家庭に広まったのは、ちょうど、今から100年ほど前。現在の100年企業が生まれた当時は、日本中、「夢」で溢れていたのかもしれない。電気で何でも便利にできるかもしれないという発想は、電機メーカーの技術発展につながり人々のライフスタイルを一新させた。今や、家電にまでAIが搭載され、スマートフォンやウェアラブルデバイスとの連携もできる。100年の時がこんなにもライフスタイルを変えた今、この後の100年を変えるのは、人生100時代を生きる設計者である。今更ではあるが、AIは、数千もの、数万ものオプションを提示してくれる。設計者だからこそ、そのおびただしい数のオプションの中から、自分自身がワクワクする、ドキドキする1案を選択したい。そして他の設計者の案には、それ乗った、と思える判断の基準を持ちたい。そういう仲間と何かを創り出すことこそ「今どきの設計」なのだと思う。

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