禍い
災いも、禍いも突然やってくる。11月は、16:30を過ぎればもう日没。18:00はもう真っ暗だ。しかし、国道の交差点はライトで照らされ、人の顔も認識できた。歩行者信号機が、青に変わり、右折専用車線で曲がり切れなかったらしい車がいることを確認。「あ」っと思った瞬間、それが起こった。後はご想像にお任せしたい。まぁ、不幸中の幸いで、命を落とすようなことにはならなかった。ただ、この禍いは、100%自動車(運転者側)の過失だ。道路交通法には、バック走行に関する記載はない。が、前進、後退に関わらず、車両の運転が、他の車両の運転や歩行者などの歩行を妨げたのだ。ましてや青信号で横断歩道を歩いている、スマホを見ていたわけでもない人にぶつかるという、あってはならないことである。運転手が、高齢者ドライバーではなかったことに安堵。改めて交通事故の怖さを認識した。
AIは、どこまで歩行者を認識できるのか。自動運転に関する死亡事故は、2023年までに海外(米国)で3件程度発生している。日本では、死亡事故こそ起きてはいないが、実証実験が行われるようになったことで複数の事故が発生している。中でも、米国で2018年に起こった自動運転中の車両が歩行者と接触し死亡させるという事故は、世界で同様のシステムを開発する企業には大きな衝撃となった。事故報告書には以下のような記載がある。AIは、110メートルほど手前で何かが路上にあることに気づく。「その他」と認識。その後、「自動車」または「その他」の判断を繰り返し、しばらくして「自転車」が「静止している」と認識。この時点で、衝突2.6秒前。衝突前、1.2秒になって衝突することを判定し、作動制御が開始。減速の開始は、衝突前0.2秒。乗車していたテストドライバーが自分でブレーキを踏んだのは衝突後0.7秒後のことだったらしい。たった3秒のできごとだ。この事故では、ドライバーが事故発生直前に携帯電話でテレビ番組を視聴していたことが明らかになっている。この事故後1週間もたたないうちに、次の死亡事故が発生した。車両が高速道路の中央分離帯に追突、運転者が死亡。事故報告書によると、部分的な自動運転機能が作動していて、車線の逸脱や車間距離の保持がシステム側によって行われていた、という状況が確認されている。そして、車両の記録データでは、事故の6秒前にシステム側が運転手に対してハンドルを握るように、警告を出していたにも関わらず、事故発生までの間、死亡した運転手がハンドルを握ることは無かったようだ。つまり、いずれの場合も、一方的に自動運転が悪いということではなく、当事者の意識が、リスクからそれていた、と言わざるを得ないということである。
画像認識のAI技術は、視覚障害者の目の代わりにもなることも期待されている。メガネ型のスマートグラスに小型カメラを装着して位置データ、地図データと歩行者目線の画像を使ってクラウドと通信しながら、歩行者を支援するツール。さらにAI技術を搭載して、杖による足元だけの対象物しか認識できない視覚障害者に対し、対象物を立体的に認識しサポートするツールなど、自動運転による事故の教訓が、必ずや、将来のAI技術の進化につながっていくことを期待したい。現在では、画像認識とAIさらに通信技術を使って、運転者、歩行者双方に危険を知らせる技術も開発されている。禍いに遭遇しないためにも、常にリスクの意識を持っておくべきであろう。