価値の変化

世界中で深刻化が進み、問題視されている環境問題。そのほとんどは人間が利便性を追究したことによる代償と言っても良い。製造業は、「より良い社会」を造るために努力しているのだが、生きる上で何よりも大切にすべき地球が壊れてしまっては元も子もない。

昨年、今年と、東京オリンピック開催による需要や巣籠需要などの理由で、家電業界はまずまず好調のように見える。今年1月頃までは、コロナ禍からの景気回復に伴い、企業の設備投資意欲が増したことで、機械受注の伸びも見られた。先進国を中心とした人手不足の深刻化が、工場の自動化ニーズを呼び、AI・IoT機能を搭載した工作機械が積極的に開発されている。一方、日本の経済を支えてきた自動車業界は、ロシアのウクライナ侵攻の影響で半導体供給不足の影響を受けた。さらに、排ガス用の浄化媒体に使用されるパラジウムの供給不足が懸念されている。環境問題がそうであるように、一時的な対応策ではどうにもならず、中・長期的な戦略の上にモノづくりをしなければなるまい。

「より良い社会」を造るための有用な乗り物としてガソリンで走る自動車が登場してから100年以上経つ。そして、排気ガスという課題も抱えることになった。1962年、米国カリフォルニア州で排気ガス規制が制定され、1963年には、全米に規制が制定された。日本では、1966年のガソリン車に対するCO(一酸化炭素)の濃度規制から始まり、さらにHC(炭化水素)、やNOx(窒素酸化物)の規制が追加され、78年には世界で最も厳しいといわれた排気ガス規制が施行された。この有害物質を低減するための触媒として、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)が使用され、前述の通り、世界40%を占めるパラジウムの生産国ロシアからの供給が無いと、打撃が大きいというわけだ。しかし、世界は、今、まさに電気自動車の開発に舵をきったのではなかったのか。ガソリン自動車の開発が大衆化に貢献する時代は終わったのである。

CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)のモビリティが、社会環境を大きく変化させることを疑う人はいない。このCASEという言葉は、次世代の自動車業界が向き合うべき市場の形であり、あのテスラも、CASEの代表企業とみなされるようになった。しかし、テスラは、一味違う。バッテリー、ソフトウェア、モーターにこだわり、化石燃料利用による経済からの完全脱却、そして、自動運転車両によるシェアサービスを運営、将来的には太陽電池を装備し自家発電までを目指したEVを製造することをミッションに置いた。つまり、テスラは、これまで、自動車業界が行ってきたブランドを頂点とするピラミッド型の分業構造を破壊したいのだ。さらに、排気ガスやCO2を排出しない、広告費を多量に含んだ大量生産時代の消費形態は止め、未来への貢献を意識した「サステナブル(持続可能)」な志向性を持つ人々へ向けて製品を提供することを決断した。これまでになかった新しい価値の販売を開始したのである。3DCADの大衆化を目指しSOLIDWORKSが誕生して27年。この先、カーボンニュートラルの実現に向け、製造業が「よりサステナブル」に製品開発、製造に邁進できるよう、私達の新しい価値も見て欲しい。

 

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