シウマイ弁当
「和食」が、ユネスコの無形文化遺産として登録されたのは2013年のこと。フランス料理、地中海料理、メキシコ料理なども、食の無形文化遺産として登録されている。日本ではおなじみの、ラーメン、ハンバーグやカレーライス。どこまでを「和食」と言うのか。と問うのは、愚問である。なぜなら、これらの食が、無形文化遺産として登録されている理由は、「社会的機能」、「文化的機能」、「教育的機能」の3つの観点から、ユネスコ無形文化遺産保護条約に基づいて、その文化の保護と継承を図るのに相応しいもの、と判断されているから。その地域の伝統文化や生活習慣と密接に関わっているのに、何もしないでいれば、消えていってしまうかもしれない文化を保護する、というのが登録の目的だからである。和食には、ご飯を主食として、それをおいしく食べるための、汁、菜、漬物という副食で成り立つ、という特徴がある。主食と副食を交互に食べる、そして、箸と碗を、手に持って食べるという食事作法。素材の味を活かす料理方法に、日本の味を決定づけた、醤油、味噌と出汁。日本人に生まれて良かったぁ、と思う瞬間を味わった経験は誰にでもあろう。
和食の神髄は、出汁である、と言う人は多い。事実、甘味、塩味、酸味、苦味に続く第5の味、旨味は、日本人が発見した味である。人間の体内で、味覚を感じる(刺激を受ける)構造は、視覚や嗅覚などの感覚と同じ構造らしい。さらに言えば、5つの味のうち、甘味、苦み、旨味、の3つの味は、刺激を受ける構造が同じだそうだ。しかし、この刺激を受ける構造には、遺伝的な違いがあることが明確で、例えば、人間でも、ある種の苦味物質に対して、苦いと感じるグループと何も感じない(=苦味として感じられない)グループがあることは古くから知られているらしい。これは、住んでいる地域で手に入る食べ物の種類が異なると,自然にその土地の食べ物を美味しく食べられるような個体が優位になって遺伝してく、ということが考えられるらしい。言い換えれば、出汁をうまい、と感じて生活している民族と、そうでない民族では、旨味を感じる構造の遺伝は、言わずと異なるということである。
先日、「AIが「******シウマイ弁当」の一番おいしい食べ方を解析したら」というネット記事(参照:https://forbesjapan.com/articles/detail/41957/1/1/1) に遭遇した。食材に合う味付けと調理方法。それぞれの味が混らならいように配慮されるだけでなく、視覚でも楽しめるように工夫される盛り方。「弁当」は、日本の食文化を代表するものの1つである。この記事では、味覚を定量的な数値データとして出力できる機械によって、点数付けし、高得点の組合せをいかにたくさん作り、高得点の組合わせを無駄なく食べ進めるかというルールに則した「シウマイ弁当」の食べ方が、AIよって提案された、と紹介している。注目すべきは、一般人では考えられなかった食べ進め方の新しいルートが発見されたことにある。AIに学習させるデータの数や種類によって、結果が異なることは言うまでもない。しかし、AIを使うことによってしか得られない新しい発見があることは確かであり、その結果を使う側は、「うまさ」に無関係な人達にも「うまさ」を知ってもらう機会を想定できることを知るべきであろう。万が一、売り上げの気になる製品があるのだとしたら、テクノロジーを使うのも悪くはない。思考を停止させずに、学習することのほうが大切である。