3Dプリンターが地球を救う

皮肉なことに、COVID-19により、3Dプリンターの活用、価値が見直されている。想定の範囲だったのか、または、予期できなかったのか、強いはずのサプライチェーンが崩れ、製品が製造できない事態。一消費者として、早期に解決されることを願うばかりである。

3Dプリンターは、製造業において圧倒的なコスト削減をもたらす、と注目を集めた。今や、アディティブマニュファクチャリングは成熟した技術、と言われてはいるが、製造業においては、あっ、と驚くようなニュースが見当たらない。自動車や、航空機といった、軽量化に開発のポイントがある製品分野では、金属部品をプラスチック部品で代用することに大きなメリットを感じ、3Dプリンター製品導入に意欲的であったことは理解しやすい。近年では、3Dプリントする材料も様々に開発され、金属はもちろん押出工程で複合素材にも対応できる3Dプリンターも出現した。日本においてもモビリティ(3Dプリンター自体を移動でき、現地で製品を印刷)を可能にした3Dプリンターなども出現しており、「3Dプリンター」とう製品自体は、市場における認知度を高めている。一方、3Dプリンターで製造された製品は、どこに隠れているのだろうか。

このテクノロジーに製造業界よりも大きな関心を持ったのは建築・建設業のようだ。国連が、「上下水道が利用できない、十分な空間が無い、または安全が保たれない、「不適切」な住宅に暮らしている人が世界中にいる。その中には政変や自然災害に現在も喘ぐ国々からの増加する移民や難民も含まれる」と示し、この世界の住宅危機への取り組みに関する議論を開始したことがきっかけだったのかもしれない。米国のあるNPOが、2015年、中南米のハイチで最初に作ったのは、コンクリートブロック、アルミ製の屋根、木製の扉で作られたシンプルな住宅だった。80棟の住宅建設期間は、10カ月。シンプルな材料ではあったが、1棟あたりのコストは、約6,500ドルにも上る。このNPOが、コンクリート用3Dプリンターを提供する企業に出会った。その後のストーリーは、書くまでもなかろう。

「3Dプリンターは、圧倒的なコスト削減をもたらす、として注目された」と冒頭に書いたが、世界的には、その活用目的に変化が見られる。世界は、3Dプリンター活用の効用を、地球温暖化防止、と見ているのである。製造工程を一気に短縮化することで、使用されるエネルギー消費量を削減できること。そして性能のよい軽量な3Dプリンター製品を使用することによってもエネルギー消費量を削減できること。3Dプリンターは、CO2削減につながる2つもの効果を持っているというのである。環境問題への取り組み意識が芽生えたのか、3Dプリンター先進国のアメリカでは、プラスチックの「リサイクル」気運も高まっているらしい。温室効果ガス排出量の約40%近くを排出していると指摘されている建設業界。セメント系製品、鉄筋など金属部品の製造またはそれらの部品を使った建設を、3Dプリントによるスマートな方法に変化させることで、「無駄の多い業界」の汚名を返上する日はそう遠くないかもしれない。

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