Kaizen

ご存じの読者も多いであろうが、「Kaizen(改善)」、「Heijyunka(平準化)」、「Hyojyunka(標準化)」、「Gemba(現場)」「Jidoka(自動化)」など、トヨタ生産方式を示すキーワードは、既に日本語でも通用する世界になっている。1980年代に米国マサチューセッツ工科大学の WOMACK教授らが、日本の自動車産業における生産方式を研究し、その成果を再体系化・一般化したものがリーン生産方式と呼ばれ、彼らの著書『リーン生産方式が 世界の自動車産業をこう変える』(1990年)により全米に広まったからだ。WOMACK教授らは、トヨタ生産方式の「ムダの排除」に着目し、製造工程の「ムダ」という「ぜい肉」を落としたスリムな生産方式を、Lean:ぜい肉の取れた、という意味で、「リーン生産方式」と名付けたそうである(Wikipediaより)。このトヨタ生産方式をお手本にした研究によって、再体系化され一般化された方式では、日本のボトムアップ型ではなく、トップダウン型にすることによって部分最適化ではなく全体最適化を追求しやすい点で、100%トヨタ生産方式と異なることも実に面白い。

リーン生産方式では、改善を進める4つの方法として、①PDCA(Plan→Do→Check→Act) :品質管理の父といわれるW・エドワーズ・デミング氏の提案、②QRQC(Quick Response Quality Control):日産生産方式、③Agile(アジャイル)そして、④VSM(Value Stream Mapping):材料と情報フローマッピング、を掲げている。さらに、6Sigma(米モトローラが開発した品質管理手法)、見える化(Visual Management)、標準化された作業(Standardized Work)など、3つのコンセプトを持たせている。100%トヨタ生産方式では無いという面白さは、どの企業が提唱したに関わらず、その特長を学び、一般化された方法に沿って誰でも「改善」の道を歩むことができるということ。日本に、このリーン生産方式が、逆輸入されたのは2000年頃だが、もともと日本で培われた考え方であるのだから、製造業に留まらず広い業界で採用されるのは当然のことであろう。

主に米国では、「Kaizen」を企業に勧めるコンサルタントは、体系化されパッケージ化された「リーン生産方式」ソフトウェアの導入を提案することが多い。ある米国コンサルタントが、「改善」を提案するアプローチで、漢字の「改善」を次のように説明している。「改善とは、改 =Changeと、善 =Goodという2つの漢字で構成される言葉です。良い方に改める、ということです。さらに、改は、「己」=myselfに 「攵」自分の手をムチ打つ、という象形文字からできています。己を自らムチ打って奮い立たせるということですね。「善」は、前述の通り「良いこと」なのですが、「Sheep(羊)」を、sacrificeいけにえに差し出す、という意味を持った漢字でもあります。

その昔、裁判というものは神聖な物であり、その判断は絶対的なものであったようです。神聖な裁判では、いけにえを差し出して、両者が納得する=「善い結論を求める」、という意味を持った漢字が、「善」です。己にムチ打って、良い結果を求める、それこそが「改善」です」と。そして、リーン生産方式では、「顧客第一Customer First」を忘れてはならず、「人」が最も重要な価値であることにも触れている。その上で、理想の状態と、現実の状態のギャップを埋めること、それがKaizenであると。「月末までに各自改善案を提出」などという強制的な「かいぜん」を、「Kaizen」とも「改善」とも呼びたくはない。

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