擦り合わせ

1300年以上の歴史があり、国の重要無形民俗文化財に指定されている岐阜市の長良川鵜飼(うかい)が、今年は、新型コロナウイルスの影響で41日遅れて開幕したらしい。最近、TVで、鵜匠が乗る伝統の「鵜舟」の製作が途絶えかねない状況となっているニュースが報道されているのを何度か目にした。図面というものが存在せず、船大工どうしの間でノウハウが受け継がれてきただけで、後継者が不足しているためらしい。川魚の木造船の需要は減少する一方であり、中でも鵜船は、製法が特殊なため後継者が育たないと言われているそうである。約600隻もの、鵜船を製造した熟練の船大工の技術が消えようとしているのである。

 

前述の通り、木造船の需要は減少した。その理由として、繊維強化プラスチック(FRP)などの普及がある。保管状態にもよるが、FRP素材で製造される漁船の耐用年数が、20年~25年と言われているのに対し、木造の船の耐久性は10年から15年と短い。おまけにメンテナンスの手間もかかる、とすれば需要が下がるのもしかたがないのか。しかし、鵜を操りながら船を操る鵜飼は、軽くて操作がしやすく、安定性に優れていて、川の環境に合わせることができるのは、圧倒的に木造の船で、これに勝るものは無いと言う。ここにも「安定性」とか、「操作のしやすさ」という数値として測れない情報が含まれるところに、日本の「巧の技」の存在を感じざるを得ない。なんとか、数値として保存できないものなのだろうか。製造には、「図面」が不可欠なことに改めて気づかされる。

 

図面とは別に、「木」という素材を知り尽くした技も見逃せない。接着剤も無いのに、「木」と「木」を接合させる。これだけで、水の侵入を防ぐことができるらしい。擦鋸と呼ばれる特殊な鋸で、木の合わせ面を引くことで、コンマ何ミリという微妙な凹凸をピッタリ合うようにする。このワザを「擦り合わせ」と言うのだ。そう、製造業の現場でも一般に使われる、機械設計どうしのすり合わせ、機械設計と電気設計のすり合わせ、上流工程と下流工程のすり合わせ、などなど。「すり合わせ」ておかないと、水が浸入してきてボロが出てしまう「要所」では、必ず「すり合わせ」が必要である。では、「木」という素材に慣れていない諸外国の人々には、「すり合わせ」はあるのか。答えは、「NO」、存在しない。これが意味するところは何か。「調整」はできる、が、ピッタリ合う「あうん」の呼吸は無い。私は、「〇〇をする人」、あの人は、「△△をする人」。分業の最適化でもある。そういう諸外国の人が、今、日本の「すり合わせ」技術に大きな興味を持っている。なにも、船大工の技術に限ったことではない。日本の巧の技術を、「データ」に変え、「情報」を抜き出そうとしているのだ。「すり合わせ」の巧の技は、結局、外国人に(という表現には御幣はあるが)引き継がれてしまうのだろうか。

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