3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2024 基調講演を振り返る

2024年11月15日(金) 赤坂インターシティコンファレンスで開催された3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2024。ここでは、3DEXPERIENCE Works カスタマー・ロール・エクスペリエンス シニア・バイス・プレジデント Gian Paolo Bassi(ジャン・パオロ・バッシ)、とSOLIDWORKS CEO |3DEXPERIENCE Works R&D バイス・プレジデント Manish Kumar(マニッシュ・クマー)の基調講演での発表を抜粋してご紹介いたします。

 

Gian Paolo Bassiの最初のスライドは、今年1 月に発表された Gartner(ガートナー)による、今後 10 年間の最も重要なテクノロジートレンドが 4 つの主要テーマにまとめられている、調査論文でした。

4つのテーマとは、Smart world(スマートな世界)は、複数のデータ種別を同時処理できるようなインターフェイスを通じて、人、場所、モノの間のやり取りを変革し、人間のようにやり取りする仮想ツインによってますます促進されるテーマ。大規模な非構造化データシステムの人間による使用を強化する AI テクノロジーの進歩によって促進される、Productivity Revolution(生産性革命)のテーマ。3つ目は、Privacy and transparency(プライバシーと透明性)であり、テクノロジーの採用 (責任ある AI) と資産、情報、エクスペリエンスの仮想化の増加の制限要因になりそうなテーマです。そして、AI ハードウェア、改善された通信サービス (低軌道衛星など)、量子コンピューター、新しいデータベーステクノロジー (スケーラブルなベクターデータベースなど) などのCritical enablers(重要なイネーブラー)は4つめのテーマでした。このようなトレンドは、企業と個人がそれをどのように動かすかによって大幅な変革が起きること、また、将来にわたってビジネスを保証する唯一の方法はすべてのプロセスと資産の仮想化であるということ、の理解が必要になることは明らかです。実現のためには、業界がどのように進化するかについて共通のビジョンを共有する信頼できるパートナーとのコラボレーションが不可欠になる、と言えそうです。Industry 5.0 は、より持続可能で人間中心で回復力のある産業への移行の必要性を強調することで、既存のIndustry 4.0 パラダイムを補完するものです。Industry 5.0 は、地球を尊重し、社会全体の幸福を産業革新の中心に据えながら、新しいテクノロジーの価値を捉えて成長を追求しようとします。このような動向の中で、McKinsey は、2022 年 4 月 に調査記事を発表しています。この調査の分析により、価値創造の重要な推進力は、設計者が組織の他のメンバーとどの程度協力して作業するか、にあることが明確になったことが非常に興味深いところです。

より持続可能で人間中心の産業へ進化するためには、廃棄物や汚染を最小限に抑えるために、所有から共有へ、消費から再生や再製造による材料や製品の最大限の再利用へ移行することにこそ、いわゆる「循環型経済」を実現できると私たちは考えています。そして、この循環型経済を実現するためには、生産プロセスの大規模な再編成を実施する必要があるとも考えるのです。

ここまでくれば、想像力逞しい読者の皆さんは、ダッソー・システムズが考える将来について思い当たることがあると思います。そうです、Gian Paolo Bassiは、私達 ダッソー・システムズは、エクスペリエンスエコノミーと循環型経済が融合して、いわゆるジェネレーティブエコノミーになっていくと考えています、と続けます。ジェネレーティブエコノミーでは、データとモデルは、環境から学び、データ、科学的根拠、経験から知識とノウハウを構築する生物のように進化します。克服できないと思われていた複雑さからこれまで分析や理解が困難だった膨大なデータ、業界知識に基づいて構築された無数の斬新なソリューションの探索は、今日、AI と機械学習の進歩により、人間の創造性を高めることが可能になりました。3DEXPERIENCE プラットフォームは、このジェネレーティブエコノミーをサポートするために構築されているのです。そのプラトフォームの上で稼働する 3DEXPERIENCE Works の使命は、プラットフォーム上でシームレスに統合されたすべてのソリューションのパワーを活用して SOLIDWORKS を拡張することに他なりません。3DEXPERIENCE Works は、今日では価値を創造し成功するための前提となっている企業のすべての知的財産と資産を仮想化するのに役立ちます。

この後、GPは、より具体的に3DEXPERIENCE Works の側面を紹介していきます。SOLIDWORKSを日頃ご愛顧いただいている設計者の皆様にこそ、ともすればミクロな視点のモノづくりから、マクロな視点に立った改革の切り口を見出していただき、是非ともエクスペリエンスエコノミーと循環型経済の融合を実現していただきたい。SOLIDWORKSおよび3DEXPERIENCE Worksを活用し、ビジネス変革につなげている企業の1つとして、長野オートメーション様をご紹介し、今後も、世界中の企業が抱える製品開発における大きな課題を克服できるように支援していく、と締めくくりました。

 

続いて、ダッソー・システムズ SOLIDWORKS CEO 兼 R&D担当バイスプレジデントのManish Kumarが登壇しました。Manishは、テクノロジーの進化とそれをカタチにするSOLIDWORKSユーザーの皆様のパワー、について常にアンテナを張っています。今年も、彼は一型糖尿病でサッカーもできなかった少年が、糖濃度を持続的に測定できるテクノロジーの進化によって、ハーフマラソンができる成人にまで成長できた話題を取り上げました。アイデアを設計にすることは非常に重要ですが、そのアイデアを仮想的にテストし、デバイスが備えている複雑なシステムを管理し、規制遵守を確保するために要件、文書、記録を管理する堅牢性を提供することも同様に重要になります。SOLIDWORKSユーザー様がそれらのプロセスを滞りなく遵守できるように、私達は、3DEXPERIENCE プラットフォームを提供するのです、と続けます。

製品を作るためには、今や、3Dデータだけでは十分ではありません。人、アイデア、データを集めAIというテクノロジーを使うという環境は整っています。Manishは、SOLIDWORKSイベントで行われてきた「モデルマニア」のお題(モデル)をSOLIDWORKS95で社員に作成してもらう、という動画を披露しました。SOLIDWORKS95を操作する社員の顔は、最初は驚き、少し嬉しそうで、好奇心旺盛に見えました。が、次第に険しくなり、操作を初めて30分後、やっとスケッチはできあがりましたが、「Manish、最後までやらせる気?」とギブアップです。一方、xDesignを使うと、なんとたった90秒で構築できるモデルだった、というオチ。3D CADでさえ、この30年に変革が起きているのです、ということを伝えたかったのでしょう。この30年間で、750万人を超えるSOLIDWORKSコミュニティが構築されました。私達は、お客様からのフィードバックに基づいて、価値を探求し(Explore)、改善し(Improve)、提供して(Deliver)いかなければなりません。そして、同時に、クラウドコンピューティング、データマイニング、AIなどの最新の技術進歩を活用して、お客様が望むイノベーションをさらに速いペースで実現し、利益を上げ、生産性を向上させる画期的な価値を提供する必要があります。

Explore、Improve、Deliverしていることとして

・SOLIDWORKS2024から、2025にかけての機能強化項目数200強

・パワーユーザー様向けのSOLIDWORKS Ultimate リリース

・3DEXPERIENCEプラットフォームを活用するアプローチとして、“WITH the Platform”と“ON the Platform”を提供

・ステップバイステップで学習可能なクイックツアー機能追加

・DraftSight Creator のリリース

などがハイライトされました。さらに、Cadence Design Systems(ケイデンス)との協業により、今後、エレメカ協調設計におけるコラボレーションエクスペリエンスのさらなる提供、SOLIDWORKSのエキスパートR&Dチームが、立体パズル(通称:ルービックキューブ)を攻略するロボットの製造にチャレンジしたストーリーを交えながら、フルクラウドの設計機能「3D Mechatronics Creator」が紹介されました。

そして、最後を締めくくる話題は、AIです。合致ヘルパー、選択ヘルパー、スケッチヘルパーおよびアノテーション自動検出などは、今日、使うことが可能なAIテクノロジーを使った機能です。11月のリリースでは、「コマンド予測」機能が追加されます。SOLIDWORKSが、あなたの使う次のコマンドを予測し表示するのです。画像からスケッチを作成する機能も追加されます。これらは、AIが、皆さんの操作をアシストするというカテゴリーです。私達は、ここに留まりません。次はいわば「魔法(Magic)です」。例えば、駆動する装置のポンチ絵を紙に描き、それをカメラで撮影して画像を取り込むと、形状(スケッチ要素)はもちろんのこと、固定点やスライド、ジョイントなどの機構的な要素も認識し、動きのあるスケッチまで生成してくれる。つまり、画像からスケッチを生成するAI機能の開発です。必要であればAIに「図面」を作ってもらう、というのはどうでしょう。私達は、Generative AI(生成AI)が、さらなる生産性向上のブースターであり、これらの機能を提供することによって、設計者の皆様が、皆様の時間をもっと「innovation(イノベーション)したい」コトに使う手助けをしたいと考えています。SWYMが、SOLIDWORKSと統合されました。これは、SOLIDWORKSから直接、3DEXPERIENCE プラットフォームのコミュニティにアクセスできるようになった、という単純な話ではありません。過日、ダッソー・システムズは、Mistral AI (https://mistral.ai/) と提携し、「AIを活用した信頼性の高い業界標準のソリューションを提供してジェネレーティブエコノミーを加速する」ことを発表されました。SOLIDWORKSから、質問をなげかけるだけで、ヒントが、アイデアが即座に生成され回答してくれる世界を想像してみて下さい。成長に制限はありません。私達は、未来をお届けするためにここにいます。と締めくくりました。

 

Gian Paolo Bassiが引用した、Gartnerによる、今後 10 年間の最も重要なテクノロジートレンドの中には、前述の通り、量子プロセッサの存在があります。私達が慣れ親しんできた「古典コンピューター」の情報単位「ビット」は、「0」か「1」の状態の「どちらか」しか取ることができないのに、量子コンピューターの情報単位は「量子ビット」と呼ばれ、「0」または「1」の「どちらも」取りながら計算を行うことができます。現在の社会には、スーパーコンピューター(規模が大きかったとしても、古典コンピューターの一種)がたとえ何万年かかっても解けない問題が数限りなく存在します。この難問を量子コンピューターは、劇的に小さな消費電力で、かつ現実的な時間内で解ける可能性をもっていると言われています。次の10年で、社会には大きな変化が生じるでしょう。それは、私達SOLIDWORKSが重ねてきた30年間に匹敵する変化?いえ、それ以上の速さで突然目の前に現れると考えたほうが良いでしょう。新しいテクノロジーを取り入れる準備はできていますか? AIは、未来ではありません。現在そのものです。どちらかと言うと物事の理解が遅い、筆者ですが、遅いなりにも理解しようと努力し、同じ阿保なら踊って楽しむほうに転がりたいと思えた基調講演でした。

 

 

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Dassault Systemes SOLIDWORKS Corp.は、データの作成、シミュレーション、管理、テクニカル コミュニケーション、電気設計、ビジュアリゼーション、コラボレーションを行い、エンジニアリング リソースの革新と生産性を達成するための完成されたソリューションを提供しています。