3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2023 閉幕 ~その2
3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 人気セッションは何といってもユーザー事例です。設計者であれば、誰でも、他の設計者の挑戦を見てみたいはず。
今年も多くのお客様に、自社の取り組みをご講演いただきました。全てをご紹介できないのが残念ですが、3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2023 にご来場いただけなかったお客様に是非お伝えしたいコメントをご紹介します。
毎年お楽しみなのが SOLIDWORKS User Group 通称 JUG(ジャグ)と呼ばれるユーザー会のリーダーの皆様による「ユーザーがユーザーにおくる虎の巻」シリーズです。
ユーザー目線でみた、覚えておくと便利なコマンド、使い方のヒント満載のセッション。ご講演者の1人、黒木様は、ショートカットキーよりマウスジェスチャーがお勧めのようです。ショートカットキーだと、「S」キーを押して、マウスを動かし、必要なコマンドを選択、という3つの動作を行わなければならないでの、マウスジェスチャーは確実に「手の負担」を軽減できるそうですよ。ヘッズアップメニューには、「測定」「質量特性」など、繰り返し使用するコマンドを配置することで、これまた、マウスの移動を極力抑えられるそうです。フィーチャープロパティってご存じですか? 「何このフィーチャーなんのためにあるの?作ったヤツ出てこいや~」って思った時、フィーチャーのプロパティを見るとなんとフィーチャー作成者の名前が表示されるんです。逆に、恐ろしいですねー。変なフィーチャーを作ってしまうと、後世まで、名前が残ってしまいます。設計者たるもの責任を持ってフィーチャーを作成しましょう! スケッチの小技では、パワートリムが紹介されました。トリムするには何と言っても「パワートリム」を使うべきなんですが、トリムと言いつつ、線の延長とかできるんです。ご存じでしたか?来場者の皆さんは画面に釘付け、線が延長されると、「おー」という歓声が場内を盛り上げます。などなど、永遠に聞いていられる小技集は、予め30分枠、と聞いていたJUGのご講演者のお言葉とは裏腹に、しっかり60分を使い、ご来場者の皆様の笑顔が絶えないセッションになりました。
次に、「たねまき」(敬称略)をご紹介しましょう。SBプレーヤーズ(ソフトバンクグループ。行政ソリューションに特化した事業の推進)グループである 「たねまき」は、2019年から地方創生のための農業事業を展開しています。
同じくグループ企業である「たねまき常総」が実際に自社農場を持ち農産物の生産、販売、研究などをしているのに対し、「たねまき」は、その技術支援をする部隊として、二人三脚の取り組みを行っているそうです。茨城県常総市が、多数の地権者が所有する農地を集約して大区画化しながら、生産・加工・流通・販売まで一気通貫する事業施設を整備するという「アグリサイエンスバレー構想」を打ち出し、たねまき(と、たねまき常総)は、この地に、敷地面積7ha、栽培面積 4.5haの日本最大級のミニトマト生産拠点を建設しています。熊本、北海道という有名な産地からのミニトマトではなく、首都圏に近いという立地を生かし、「鮮度」を東京に届ける、ことへの取り組みを開始したのです。ご講演いただいた技術開発部の嶌津様、小泉様らは、労務・生産管理システム、収穫ロボット、収量予測技術の開発などを通じて、技術の面から農業支援をしている、ということです。たねまきが考えるスマート農業とは、機械化やデジタル化を進めて究極の効率化を図る、ということではなく、農業は農業として進化させる、ということ。変動要因の多い農業という事業にとって、仲間を増やし、多様な要求に応えていくことは重要なことだそうです。そこで、出会ったのがSOLIDWORKS でした。3DCADを導入するにあたって必須条件だったことが、農場(現場)にあわせた開発の意見交換(形状変更)のしやすいこと、必要なモデルをすぐに見つけられること、モデルのリビジョン管理ができること、承認履歴を残し確認できること、であり、コロナ禍だったこともありリモートワーク環境に適応できるCloudを使ったソリューションだったそうです。SOLIDWORKS Connected 版に出会い、「実現できる」と確信したそう。使い始めて1年足らずですが、ブラウザ経由でモデルを確認することにとても大きなメリットがあることを認識でき、CADを使えない人でも寸法を測定したり、断面を見たり、コメントできる機能を有効に使っている、とのこと。版管理は、ステータスで確認でき、承認プロセスのルールを作れば、上書き、誤って削除などの人的ミスは発生しなくてすむことなど、通常はCADだけでは実現できないプロジェクト型の作業に適していると実感されていました。設計者が増えればスケーラブルにロール追加、付与、を検討できることも企業としてメリットだともコメントしていらっしゃいます。今後の変動要因に負けない、強い農業を支えるツールとしてのSOLIDWORKS。また、進化する農業を支えるための「仲間」を是非、増やしていって欲しいと思います。
続いて、「animal spirit」 (経済活動に見られる往々にして主観的で非合理的な動機や行動のことであり、事業家の「血気」「野心的意欲」「動物的な衝動」などと訳される、経済学者ケインズの言葉) 3代目流、中小企業の等身大DX と題してのご登壇は、宝製作所 丹羽様です。
大学卒業後、ものづくりが好きで2019年ヤマザキマザックに入社、高くて格好イイものを売りたかったという丹羽様は、営業マンとして働き始めました。高いブランド力を持つ工作機械を購入するお客様が相手で、常に受け身の状態。知らず知らずのうちにチャレンジ精神が芽生えづらくなっていた頃、実家である宝製作所の社長であるお父様の、新工場建設計画を知って、「一緒に会社を成長させたい」と感じ始め、宝製作所に入社したのは昨年のことです。
当時の宝製作所の「課題」だと感じていたことの1つに、「自社の機械が空いているので、何か仕事をくれないか」という自己利益起点の考え方から抜け出せない現状があったとおっしゃいます。この考え方を「弊社を使ってもっと設けませんか?」という顧客利益起点にしなければ、という思いがあったと振り返ります。さらに、会社を成長させていくためには、自社の強みをお客様に活かしていただき、お客様には、お客様自身の強みを活かすことにもっと時間を費やして欲しい=設計改善コンサル業、への移行を考えたそうです。そのために必要なツールとして選択されたのがSOLIDWORKS。設計業参入とDXを進めるために、手頃な価格、世界シェア、Microsoft Office のような手軽な操作感、サーバーレスのデータ管理、どの端末でもどこにいても、の条件に合ったのが、SOLIDWORKSおよび3DEXPERIENCE Works だったと言います。導入決定したのも昨年の12月。ちょうど1年が経ちました。変化はあったのでしょうか? もちろん。社員の働き方が大きく変わりテレワーク、設計外注のための環境が整備された、とコメントして下さいました。平均年齢36歳という若い企業が、10年後には、従業員数(現在の)3倍。売上高(現在の)5倍。第2,第3工場の竣工などを公約?に掲げた3代目。変革を乗り越えるためのキーワードとして Animal Spirit を取り上げた若い世代のチャレンジにSOLIDWORKSが関われることを大変嬉しく思いました。
もっともっとご紹介したいところなのですがスペースも残りすくなくなってきました。最後に、今年の3DEXPERIENCE WORLD JAPANでノベルティをご提供いただいた長谷川刃物様のご講演をご紹介します。
納期、コスト、品質の追求はあたりまえ、自動化、省力化、デジタル化がごく自然の環境で働いていた講演者長谷川様にとって、長谷川刃物のほぼ手作業で流れていく工程は衝撃的だったとおっしゃいます。多品種小ロットではあるものの、ハサミだけでも60万丁/年の生産があるため、SOLIDWORKSを使って工場設備をブラッシュアップさせ、効率化と働く場所の改善ができるのでは、というチャレンジが、長谷川刃物様のストーリーです。3つの悩みに一刀両断。それぞれにBeforeとAfterの状況がわかりやすく描かれ「改善」の効果がハッキリと理解できました。1つめの悩みは、刃物業界が、専門職による分業で成り立っていることから生まれています。同業者との職人の奪い合い、または職人の高齢化などで、内製で刃物を作らざるを得ない状況となりSOLIDWORKSを使って5つの作業工程を検証し実現しました。2つめの悩みは、作業疲労です。刃物の鏡面仕上げで使用する研磨剤(エメリ)が固着してしまうとこれを除去するのは一苦労なのだそうです。この除去工程は、全て手作業で、ブラシでゴシゴシしたり、シンナーを使ったりと色々試行錯誤したのですが、腱鞘炎や、(シンナーによる)頭痛など、作業環境は一向に改善されず、ここでも新しいエメリ除去機械の試作にSOLIDWORKSで挑戦したそうです。新しく製造されたブラシ機械によって、長谷川刃物で働く女性従業員の皆さんは笑顔に。3つめの悩みは新製品開発。既に量産されているカッターの樹脂部分について、新型として形状変更したものと従来型とでは、量産するに値するのはどちら?という課題に挑戦。長谷川様にとっても新しい挑戦だったのは、樹脂流動解析です。新型の樹脂型のほうが充填で4秒もの差がでることを発見。次の製品に解析が役立てられることは間違いないでしょう。今回、長谷川刃物様からご提供いただいたノベルティ(ダンボールカッター モドルバ)は、もともと段ボール工作のために製品化されたものだったようです。それが、時代と共に物流の世界でも使われるようになりました。しかし、従来型のカッターでは、折れた「刃」が異物混入としてお客様先まで運ばれることが問題となり、製品改良が必須となってしまったのだそうです。加えて、日本だけではなく、海外の物流業界のお客様にも使ってもらおうとデモンストレーションすると、海外のお客様と日本のお客様では、仕様に関する意見が真っ二つに分かれ。。。苦労の末に、見事に最高傑作に行きついたお話を見逃したお客様は本当に残念です。
どんな製品でも、技術でも、時代の中で変化し続けることが大切なんですね、とつくづく考えさせられました。
そして、全てのご講演者の皆様が仲間を探していることも共通していたことに気づきました。仲間と協業しながらその真ん中に、SOLIDWORKSをご愛顧いただけることに本当に感謝した1日でした。
ここでご紹介したご講演またはご紹介できなかったご講演も「オンデマンドサイト」で視聴可能になりました。視聴期間には限りがありますでの、お早目の視聴をお勧めします。