サーキュラーデザインと持続可能性について
2030年が間近に迫った今、設計およびエンジニアリング業界の企業を含む多くの組織が、世界中の2030年の気候変動イニシアチブに対応するために二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいます。日本においても、経済産業省による”「ビヨンド・ゼロ」実現までのロードマップ“において、「温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比26%削減することを目指す」と示されています。
Dassault Systèmes®では、持続可能なイノベーションを推進し、組織が持続可能な設計目標を達成するのに役立つ設計、シミュレーション、ライフサイクルアセスメントツールを含む機能豊富な一連の製品群を提供することを使命としています。
このシリーズのパート1では、「サーキュラーデザイン:あなたの設計は持続可能性が考慮されていますか?」と題して、リニアエコノミー、サーキュラーエコノミー、サーキュラーデザインの概念を紹介しました。要約すると、サーキュラーデザインは、リニアエコノミーのTake(採る)・Make(作る)・Waste(消費する)アプローチを、資源集約的ではなく、再利用可能でリサイクル可能な材料を使用して、材料使用の削減に焦点を当てたサーキュラーエコノミーにシフトすることを目的としていることをご紹介しました。そして、サーキュラーデザインとは、設計段階でサーキュラーエコノミーの原則を適用し、廃棄物や汚染を排除し、製品や材料を可能な限り長く使用し、自然システムを再生することであるとも加えました。
パート2となるこの投稿では、設計およびシミュレーションソリューションがサーキュラーエコノミー向けに設計を最適化するのにどのように役立つか、ライフサイクルアセスメントが、設計自体の環境への影響を測定するためにどのように役立つのかについて触れたいと思います。
この記事作成にあたり、調査を手伝ってくれた同僚は、プラスチック材料、部品設計、射出成形シミュレーションを専門とするDassaultSystèmesのSenior DiectorであるPeter Rucinskiです。彼は、設計段階でサーキュラーエコノミーの目標を達成するための優れた指針を示してくれました。
すべては、設計段階から始まる
設計の初期段階でサーキュラーエコノミーを検討することが重要です。製品に関連するすべての環境影響の80%以上が、材料の選択や製造方法など、製品の設計段階で決定されると推定されています。
3DEXPERIENCE World 2021で、Peterは、サーキュラーエコノミー向けに設計するための設計段階でできることのいくつかの例を発表しています。
たとえば、プラスチック部品を設計する場合、仕様要件を満たし、部品の厚さを最小化できるのは、設計段階であり、原材料の使用量を減らし、製造エネルギーの要件を減らし、廃棄物や汚染を設計することも、実は、設計の初期委段階で決定していまうといっても過言ではないと言います。
また、部品品質を向上させ、製造上の欠陥を排除し、製造スクラップ率を減らし、製品の耐用年数を延ばすために、製造プロセスの最適化は、すなわち製品設計の最適化であるとも言えます。
「あなたの創造性と革新的な想像力を駆り立てるのは、恐らく設計段階ではないでしょうか」とPeterは言います。 「今日は存在しないかもしれませんが、自己循環可能な時が来るまで、何年も、何十年でも延長可能な使用/再利用サイクルに寄与する有用な耐用年数を持つ製品を開発できるでしょう」とも。
シミュレーションで持続可能性を探求する
シミュレーションは、適合性、形状、機能動作に関するテストと検証に役立つだけでなく、設計者とエンジニアが製品について多様な情報に基づいた決定を下し、全体としてより効率的な製品を作成するのに役立ちます。
シミュレーションツールを使用することで、エネルギー消費量を調べたり、材料選択を検討したり、「より環境に配慮した」オプションをテストすることができます。シミュレーションツールを使用することで、物理的なプロトタイプ作成を削減し、環境への影響を総合的に減らすことができるでしょう。
シミュレーションが概念設計段階に影響を与える可能性のあるいくつかの領域を以下に示します。
–製品内で使用される材料、およびその削減、再利用、リサイクルの影響を含む、完全な持続可能性への影響を理解する
–メカニズムの電力要件に影響を与える材料の使用を最小限に抑える
–法的な環境コンプライアンス要件を満たす
–物理的なプロトタイピングを仮想的なプロトタイピングに置き換えることで、無駄とエネルギー消費を削減する
–コンセプトの初期段階および仮想プロトタイピングによって可能になる製造プロセスでの製品の無駄を最小限に抑える
この2年間、Peterとサーキュラーエコノミーについて市場調査を行うと共に、お客様から学び、お客様から得た情報として、射出成形などのシミュレーションソリューションを使用して、サーキュラーデザインの目標を達成していることがわかりました。
OLIDWORKS Simulationを含む、SOLIDWORKS®ユーザー向けのシミュレーションツールの中にも、3DEXPERIENCEプラットフォームに接続されたStructural Mechanics Engineer や Durability Performance Engineer など、3DEXPERIENCE®Worksポートフォリオ の新しいシミュレーションロールをご活用いただけそうです。
持続可能なイノベーションインテリジェンス
皆さんが、サーキュラーエコノミーに参加できるように、Dassault Systèmesは最近、Sustainable Innovation Intelligenceと呼ばれるライフサイクルアセスメントの新しいソリューションセットを発表しました。これには、エコデザインエンジニアとサステナブルイノベーションマネージャーと呼ばれる2つの新しいロル(role)が含まれています。これらのロールを活用することにより、規模の大小を問わず、組織は、製造する製品、材料、プロセスが環境へ及ぼす影響を評価し、最小限に抑えることができます。
たとえば、SOLIDWORKSデータをEco-Design Engineerに取り込み、持続可能性要件を設計の初期段階で設定することで、設計の実装が決定する前に、持続可能性を測定できます。
さらに、持続可能性要件を設計の初期段階で設定し、設計、製品開発、製造エンジニアリングの各段階で協力して推進することにより、循環的なライフサイクルの作成を期待することもできます。材料の供給、設計、製造、運用、ロジスティクス、および寿命管理を統合できます。チームが、実際に問題に遭遇し、改善に対処する前に、仮想的に特定することで、トレーサビリティと信頼性を確保できるようにするリアルタイムで総合的な考察が提供されます。
Dassault Systèmes Sustainable Innovation Intelligence Director(サステナブル・イノベーション・インテリジェンス・ディレクター)である Muriel Moreauと会話する機会がありました。この製品に関する彼女の想いが伝わります。
Murielは、「Sustainable Innovation Intelligenceソリューションは、サーキュラーエコノミーと、今後10〜15年で達成する必要のある持続可能性の変革の触媒にすぎません」と説明します。そして 「私達は、お客様が現状に挑戦し、革新に挑戦できることを可能にする新しいオファーでお客様に力を持ってもらいたいと考えています。新しいプロジェクトを開始するときに事前に環境目標を設定することは、設計者が持続可能性のレールに則して進むのに役立ちます。さらに、設計プロセス中いつでもライフサイクルアセスメント調査を実施することで、将来の環境フットプリントを事前に把握し、最適な代替設計を選択していくことは、企業にとってとても重要です」と、コメントしたのです。
「設計上の決定を行う際に妥協しなければならない場合もありますが、少なくともライフサイクルアセスメントによって、選択した結果による潜在的な環境への影響を認識できるのです。そしてもちろん、組織はこのようなツールを使用して、確実に環境フットプリントを削減できると信じています。」
Murielがコメントしたように、私達SOLIDWORKSは、皆さんが、最高の製品を、実際に「可能に(世の中に送す)」することができるように、皆さんの革新的なアクションを起こすことを可能にし、それをサポートするために存在するのです。
地球規模の課題に取り組むことは、皆さん1人1人の任務や業務の1つ、だと言えるかもしれません。製品設計と製造プロセスが環境へ及ぼす影響を可能な限り削減することが、地球規模の課題に取り組んでいることになります。私達は、リニアエコノミーの採る(Take)・作る(Make)消費する(waste)のアプローチから移行し、サーキュラーエコノミーに移行する必要があることを忘れてはなりません。
この「無駄」に包まれたアプローチを採用し続けることは、もはやできなくなったことは明らかなのですから。