MBD 導入における10の注意点 – グラフィカルPMI(製品情報)に終始しない(Part1)

前回のブログで3D PMIでは情報のとりまとめと見せ方が重要であると紹介しました。この点についてSOLIDWORKS MBDフォーラム でWaters Corp社のTim氏からすばらしい例示を共有いただきました。:
「3Dビュー上での情報のまとめ方、見せ方を軽視すべきではありません。最近当社の主要研究チームの1つがMBDを使い始めました。最初に完成した部品は見栄えがあまりよくなく、ビューや寸法が無秩序に散乱し、とにかく見づらいのです。あまりにもひどいため、結局機械担当者は手書きで紙にスケッチを描き、作業をすすめることになりました。これではMBDの推進どころではありません。幸いにも、私でデータをきれいにし、データをどう見せられるか、見せるべきかを機械担当者に提示できたため、その後よろこんで使ってもらっています。」
ここからは見た目ではなく、中身を掘り下げてみていきたいと思います。2つの主要なコンセプトである、グラフィカルPMIとセマンティックPMI、または「見せる」ことを目的とした人間が読めるPMIと「表現する」ことを目的とした機械で読めるPMIを検証し、3D PMIの真の意義を検討します。
ますはこの2つのコンセプトについて説明させてください。
• グラフィカルPMI: この種の3D注釈は人間の目で読めますが、機械やソフトウェアには使用できません。表現の意図がわからず、人間の解釈が必要となるからです。例えば図1の手書きの直線と曲線は直径寸法20プラスマイナス0.05と解釈できます。しかし、これをNC工作機械で読み取るのはほぼ不可能です。同様に図2の3D PMIはスケッチの直線や曲線の集合体にしか過ぎず、実数や記号がありません。これを読み取るには目と脳を使い、かなり真剣に推測する必要画があります。この厄介な解釈に人間の知能と機械の知能の違いがあります。少なくとも今日現在、キャプチャが有効である理由でもあります。ソフトウェアの認識能力は依然として人間の認識能力にはるかに劣ります。だからこそ、キャプチャで悪意ある自動オンライン登録を予防し、人間による実際の登録を承認できるのです。反面、大規模な製造活動では作業の重複を避け、人間のミスを低減し、時間を短縮、品質を上げるために、効率のよい自動化が求められています。グラフィカルPMI は人の解釈に依存するため、自動化を阻みます。

グラフィカルPMIの例:手書きの寸法と公差
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グラフィカルPMIの例:スケッチの直線と曲線内の3D PMI
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キャプチャのイメージ:人間は簡単に認識できても、ソフトウェアでは認識できない
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• セマンティックPMI: この種のPMIは人間が読めるだけでなく機械でも読めます。単なる表示ではなく真の設計意図を表現します。そのため、CAM(Computer-Aided Manufacturing:コンピューター支援製造)やCMM (Coordinate Measuring Machines:座標測定器)といった製造の自動化にも流用できます。このスマート情報の設計から生産、維持管理にいたるまでの流用こそがMBDの最大のメリットで21世紀のスマートマニュファクチャリングの基礎でもあります。下記のロールス・ロイス社のイメージはグラフィカルPMI(左図)とセマンティックPMI(右図)の違いを示したもう1つの例です。私たちの目には全く同じ注釈、つまり見た目は全く同じに見えますが、右側のセマンティックPMIでは穴が16あるというだけでなく、それらがすべて適切なインスタンス情報に関連付けられ、ハイライトされています。これによりCAMで全ての穴を1つのパターンとして加工できます。一方、左側のグラフィカルPMIの穴は結局1つしかありません。16の穴全てを特定しているように見えるかもしれませんが、ここからソフトウェアで適切なフィーチャーを全て特定し、関連付けるのは至難の業です。これが結局は自動化を阻むのです。
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タービン・ディスク・モデルでの人間が読めるPMIと機械で読めるPMI の比較 (情報元:『Technical Data Package for the Digital Enterprise(デジタル企業向け技術情報パッケージ)』 ロールス・ロイス社Kong Ma氏著, 2014年)

ここまで2つの重要なコンセプトの基本をご紹介しました。機械で読めるPMIにはさらに構文、構成、解釈アルゴリズムといった側面があり、今後扱う予定です。次は引き続き同じ題材のパート2として実践的な使用例をご紹介します。機械で読めるPMIで下流生産をどこまで自動化できるか、私の意見ではここにMBDの真価があります。だからこそグラフィカルPMIで終始しないでいただきたいのです。SOLIDWORKS MBDについての詳細はproduct page(製品ページ)をご確認くださいか、下記バナーよりお問い合わせください。
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吉田 聡

吉田 聡

マーケティング部 ポートフォリオ イントロダクション スペシャリスト