拡張現実(AR)/仮想現実(VR)で前人未到の設計を実現

仮想現実 (VR)は、20年前大きな期待を背負って華々しいデビューを飾り、最近では関連した類似の拡張現実(AR)も登場しています。それぞれ、ユーザーが仮想、または複合環境に入り、あたかも現実世界にいるかのように対象とかかわることで、多くの産業に変革をもたらすと言われてます。ゲームの世界では、昨年「ポケモンGO!」が世界中で注目され、多くの人が夢中になりましたが、設計・製造の世界ではどうでしょうか?

技術者は従来のコンピューター・ユーザー・インターフェースに邪魔されることなく、直感的に製品を設計できるようになり、人々はまだ建ってもいない家の中を歩きまわることができ、顧客は最終設計にいたる前のデジタルにしか存在しない製品を試し、気に入ることができるようになるのです。あまりにもできすぎた話で現実味がないと思われるかもしれません。確かに、残念なことに実際はそこまでうまくはいきません。

現実問題、この技術は魅力的ではあるものの、初期段階にあり、VR と ARで現実世界を模倣する環境を作るのに必要な要素の多くが、ハードウェア、ソフトウェアともに不十分です。結局、それを遂行するためには、ユーザーに仮想、あるいは混合現実の世界に本当に没入しているかのように感じさせる必要があり、それにはよりパワフルなコンピューター、入力装置(ヘルメット、グローブ等々)と双方を活用するソフトウェアが必要で、なおかつこうした技術がすべて、採算性のあう価格で提供されなくてはなりません。

現状

ここでの朗報はあらゆる面で大きな前進がみられている点です。コンピューターは高速化し、大手(例:Google, Microsoft, Facebook)が入力装置の開発に多くの時間と資金を投じ、VRの大衆化の可能性を広げています。
しかしこうした前進は製品設計におけるVR/ARの使用にどのような影響を与えるのでしょう?設計者は以前から、仮想の試作品を活用し、製造が開始するよりずっと前の段階から設計を検証(シミュレーション)してきました。そこから一歩進んで、まさしくARの定義どおり、仮想製品を現実世界に没入させることができたとしたらどうでしょう?
ソリッドワークスが2013年に、eDrawingsをAR機能に対応したiOSアプリのとして発表以来、ユーザーはこの技術を活用しています。eDrawings アプリケーションのAR機能を通じて仮想製品の大きさや使用される環境が正確に伝達できるようになりました。これは大変重要なことです。というのも設計対象がリモコンのような小型製品であろうと、産業機械のような巨大な製品であろうと、結局画面ではみな同じサイズにみえてしまうからです。作業スペースを大きくとるために拡大表示はできますが、実際の大きさや実際の環境で他のモノと製品がどのように対比されるかといった使用環境のヒントとなる、ビジュアルな参照情報を画面に表示することはできません。

設計の仮想モデルを自分のすぐ隣のテーブルの上に置き、テーブル上の実際のモノたちの横に置いたり、いろいろ動かせたりしたら、製品の大きさ、サイズ、規模感が完璧に把握できたとしたらどうでしょう。eDrawings アプリでは製品を実寸で確認できるため、大きさを明確に伝達できます。

 

今後の方向性

こうした複合現実ソリューションが有効活用できる製品開発領域がいくつか考えられます。まずはセールス・マーケティングです。企業が自分の顧客にこうした環境で製品を試してもらい、製品についての市場の反応、発売前に製品のどこに微調整を加えるべきかを事前に知ることができます。同時にまた、顧客側でも製品への愛着がうまれます。これは以前では考えられないことでした。即時にROIをあげる、最も容易な方法です。
2つ目はコラボレーションです。設計の参加者が共有の仮想環境に入り、仮想製品を自然に操作、より正確なフィードバックを提供したり、リアルタイムで協議したり、インタラクティブに設計検証をすすめられます。結果としてより豊富ですぐれた情報を開発パイプラインに戻すことができます。
最終的に最も要望が多いのが、仮想・複合現実のいずれかで製品を設計するというアイデアです。装置とUXが十分進化すれば、設計者は、こうした環境に没入し、タスク完了まで間必要なだけ設計を続けることができるのでしょうか。加えて、こうした装置は設計精度で求められる許容値を維持することができるのでしょうか? 企業にとって採算が合うレベルまで価格を下げることはできるのでしょうか。
全く新しいパラダイムを採用する必要があります。最初の利用者はデジタル世界しか知らない若いエンジニア、設計者である可能性が高いです。このユーザー・グループは採用への文化的障害はありません。失敗に対する恐れもありません。探究心があるだけです。その他のユーザーは不安を感じることでしょう。コンピューターとの関わり方に新しいパラダイムを導入した、最初のスペースマウスの登場時に類似しています。
AR や VR を実務環境に統合する上での課題は多くあります。こうした装置の新しさや、ユーザーの混在(若者を始めとする初期利用者と懐疑的なユーザー)を考えると、現実をこえた設計エクスペリエンスを開発する上での溝を埋めるのは容易ではありません。しかし当社は今後も、VR、AR、MRの優れた機能を活用した、未来のソリューションの提供にむけ、最良の方策を模索しつづけます。
当社ではよりイマーシブ、協調的な方法での協業をお手伝いするツール、ノウハウをご用意しています。何百万人というユーザーが既にすばらしい3Dコンテンツを作成されており、この新しいパラダイムの下、洗練された、協調的な方法でコンテンツ・エクスペリエンスを共有いただいています。ユーザーの方々には、製品の構築、宣伝にあたり、プレミアム・エクスペリエンスが提供されるとの定評もいただいています。なるべく多くのユーザー、装置に幅広く対応することで、参入のハードルを下げていきたいです。

eDrawingsに関しての詳細は、eDrawingsサイトをご覧ください。

吉田 聡

吉田 聡

マーケティング部 ポートフォリオ イントロダクション スペシャリスト