MBD 導入における 10 の注意点 – いきなり大規模に展開しない

Oboe Wu 著 2015年11月12日

以前のブログでは、モデルベース定義(MBD)の確かなメリット、機会拡大、そして行動しない(急成長の流れに加わらない)場合の損失について紹介しました。詳しくは表 1の注意点「躊躇しない」(Part 1Part 2)についての記事をご覧ください。さて、導入の直前まで進んでいる方々には、「いきなり大規模に展開しない」という実用的なアドバイスを送りたいと思います。

表 1: MBD 導入における 10 の注意点

導入初期に張り切りすぎた事例を見てみると、さまざまな厳しい教訓を得ることができます。例えば、アメリカ陸軍研究所で MBE プログラムのリーダーを務める Paul Huang 氏の体験です。2009 年、レッドリバー陸軍補給基地で MBD プロジェクトが始動し、「いきなり大規模に展開」されました。図 1 のような、2,000 以上の部品から成るブラッドレー戦闘車用クロスドライブ式トランスミッションに導入したのです(情報元: Paul Huang 氏、『Reuse of Model Based Definition Data to Increase Army Efficiency and Reduce Lifecycle Costs (仮訳: モデルベース定義データの再利用による陸軍の効率化とライフサイクルコストの削減)』、2010 年)。Paul 氏は次のように振り返っています。「賢明な方法だったとは言えません。プロセスがあまりに複雑でした。彼ら(チームメンバー)は基本的に 1 つの作業を 1 回やって、その後は忘れてしまいます。繰り返しがほとんどないのです…。無事に乗り越えられたものの、生みの苦しみは相当なものでした

また、メーカー数社も次のように指摘します。MBD プロジェクトの初期段階が複雑すぎると、難しい課題が同時多発的に降りかかるため、参加者のストレスが溜まり、意欲まで削いでしまいます。しかも繰り返しが十分でないと、知識が蓄積されない上に、ソフトウェアやハードウェアへの投資も活かされません。


図 1: ブラッドレー戦闘車用のクロスドライブ式トランスミッション

一方、GE パワー & ウォーターでは Prashant Kulkarni 博士が 3 ステップの展開戦略を立てました。図 2のとおり、「這う、歩く、走る」の 3 ステップを経ることで、リスクの軽減が可能になります(情報源: 『Model Based Enterprise at GE Power and Water (仮訳: GE パワー & ウォーターにおけるモデルベース企業への取り組み)』、Prashant Kulkarni 氏、2014 年)。

GE のような戦略は Paul 氏も推奨しています。「まずは関係者をツールに慣れさせなければなりません。小規模なプロジェクトで作業を十分に繰り返してから、大規模なプロジェクトに取り組めば、もっと効率的に進めることができます


図 2: GE パワー & ウォーターにおける 3 ステップの展開戦略

以上、アメリカ陸軍の教訓と GE の成功事例という 2 つの角度から、「いきなり大規模に展開しない」について解説しました。次回は MBD 導入時に関係者全員の参加を促すためのアイデアをいくつかご紹介します。SOLIDWORKS MBD についての詳細は SOLIDWORKS MBD 製品ページをご確認ください。また、Twitter (@OboeWu)あるいは LinkedIn (OboeWu)でのディスカッションにもご参加ください。

【MBD導入関連ブログ】

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吉田 聡

吉田 聡

マーケティング部 ポートフォリオ イントロダクション スペシャリスト